家庭教育についての教育

 皆様のなかでお子様をお持ちの方は家庭内での教育についてどのようなお考えをお持ちでしょうか? 何を何歳のときにどのように教えるべきかを決めておられるでしょうか?

 

 信頼できる機関による広域調査を確認したわけではないのですが、実感としては乳幼児の段階では母親による読み聞かせが中心で、あとは幼稚園や公教育の年齢になったら学習塾や習い事(これらは正確にはもう家庭内ではありませんが)に通わせたり、日常生活の中で目についたことを注意したりすること(いわゆる躾)くらいではないかと思います。他に少数派として、具体的な叱り方や褒め方について意識している方や、信教に基づいて子ども向けの道徳的な説話に触れさせる方、好ましい本を買い与える方などがいらっしゃることでしょう。いずれにせよ現代で家庭教育に強く意識をもって具体的に取り組んでおられる方は奇特だと思います。そうした知識を得る機会がそもそも多くはないと考えます。幸運にして自身が比較的に恵まれた家庭教育を受けた経験がある方に限れば、その体験に照らして同じような家庭教育を意識することなく施すことができるかもしれませんが、生活環境が世代を経て変容すると自身のお子様にはそれほど有効でなくなることも十分に考えられます。

 

 逆に家庭教育などと特に改めて構えることなく自由放任とするというお考えの方も少なからずおられるようです。しかし学級崩壊やイジメ、不登校、落ちこぼれ、非行といった現下の教育現場の問題について見聞きすれば、やはり大多数の方はご自身のお子様のための家庭教育の意義について、その重要性は理解されておられるものと想像できます。

 またそうした後ろ向きの問題ではなく、より良い将来のために英才教育や情操教育、特技の習得に取り組ませたいと期待されている方もきっとおいででしょう。見せたい場所や景色、読ませたい小説、見せたい映画、会わせたい人、食べさせたい料理、預けるべき金融商品、暗記テクニックなどなど挙げてゆけばたくさんあることでしょう。特にお子様自身が未だ選ぶことができない段階であれば、やはり家庭教育として広く検討できるはずです。

 

 価値観や生き様の多様化が進む現代そして将来において、お子様の教育について学校や学習塾で用意される内容では不十分と考えるべきです。家庭教育について教育を受けてこなかったのであれば、自主的に勉強してゆくほかありません。ヨハン・ハインリヒ・ペスタロッチやハーバート・スペンサーなどといった古典よりも、現代の出版物から参考になりそうなものを拾ってゆきながら考えを固めてゆくのが比較的容易ではないかと思います。

 

 それにしても、家庭教育を施した子供がそうでない家庭の子供と付き合うようになって失敗してゆく事例は決して少なくないと見ています。自身の最大の財産を他人に傷つけられるというのは、どうにも耐えられない話ではないでしょうか。