靴に関する宣伝文句やカタログで強調される点の多くはクッション性やグリップ性、ホールド性、通気性、重量そしてデザインに集中していて、靴底の耐久性を売り文句にしている製品はほとんど見たことがありません。これは一般的に靴というものが完全に消耗品として割り切られているからと推察されますが、とはいえ決して無視できるものでも無いと個人的には考えています。長持ちするというのもかなり重要な魅力と感じる消費者は決して少なくないはずです。
もしも現在よりももっと靴底の耐久性に対する消費者からの要求が高まってそれが明確になれば、メーカー側も靴底の素材や形状に関する改善に注力するようになり耐久性が増すという技術的可能性は未だ十分にありそうに思えます。
(一部のビジネス用の靴で靴底が皮革になっている場合では、メーカーが有料で靴底の張替えに応じていることがありますが、これはあくまで限定された有料サービスであって、靴底の耐久性の向上に対する取り組みとはいえません。)
ひょっとすると靴の買い替えサイクルを意図的に短く維持しておくために、メーカー各社が足並みを揃えてこの分野に手をつけていないのか、というのは流石に邪推でしょう。現状では他のメーカーに勝つことの方が営業の主軸のはずです。実際のところはおそらく軽量化とクッション性を優先していて、耐久性はそれほど消費者から求められていないと判断しているのでしょう。開発投資に見合う売上増加が見込めないのであれば、たしかにそうした選択になるのは十分理解できます。がしかし、それにしてもあまりに長く放置されたままに感じます。
実は日本以外の国や地域で売られているが輸入されていない、または一部のスポーツ用に開発販売されているが高価なので汎用化されていないということもあるかもしれません。このあたりをビジネスチャンスと思う関係者はいないのでしょうか。
個人でできる対策としては、1足を毎日履くことを避けるというのが広く知られたコツでしょうか。あとは微力ながら靴屋の店員さんに耐久性についてこだわりを訴えてゆけば、いずれ「挑戦社」が現れると信じることにしましょう。