布団よりもベッドが選ばれる高齢化社会

 比較広告というものは足を引っ張っていると見なされて嫌われるのを避けているためか、あまり一般的でなく、商品評価の雑誌においても「順位付け」はあっても片方に軍配をあげるような断定をする人は少ないようです。しかし使用者や用途といった条件が限定されていれば、かなり選択を断定できることも事実です。

 例えば、寝具は布団とベッドのいずれが好ましいかと問われれば、少なくとも高齢者向けには明らかにベッドの方が適合すると言えそうです。以下に両者の長短比較をしてみましたので、その判断根拠を見ていただきたいとおもいます。

 

 布団とベッドとは面白いことにかなり対照的で、一方の長所が他方の短所になっている関係が見て取れます。

あ:布団の長所         ア:ベッドの短所

 日中は部屋を広く使える                  一定のスペースを占有してしまう

 お直しや交換が容易                      マットレスの交換は一苦労

 寝ている間に落ちる心配がない           寝相が悪いと布団や人が落ちる

 部屋の模様替えにも考慮不要                室内でも移動は非常に面倒

  畳の日本家屋に適合                              畳には沈み込むおそれが大きい

 比較的に安価で購入できる                   購入と設置作業にやや負担大

 

い:ベッドの長所         イ:布団の短所

    上げ下ろししなくてよい                   毎日の上げ下ろしは少し負担

    ホコリ等を避けられる                      ホコリ等を吸いやすい

     起きるときに体が楽                        寝起きには意外に労力が要る

     快適なマットレス製品が多い                 敷布団は経年で劣化し易い

     底冷えをかなり軽減                               底冷えは避けられない

     宮、引き出しなどは便利                        雑多なモノを枕元に転がすことに

 

 それぞれの長所、短所とも全般的には納得できるとして、これが健康や運動能力に少なからぬ不具合を抱えている高齢者の視点からすると、布団の長所は必ずしも魅力的ではなく、布団の短所は非常に重要な短所に映ることになるでしょう。さすがに典型的な日本家屋で畳の部屋ばかりの場合には、ベッドを選択するのに躊躇があることは間違いないとしても、ベッドの短所は必ずしも重要な問題とは感じられず、ベッドの長所は非常に重要な長所に映ることになるでしょう。

 最近の統計の多くではベッド利用者の割合は60~70%になっているそうですので、全体としてはもはや完全にベッドが多数派ですが、習慣的に布団から切り替える踏ん切りがつけられないまま、足腰を含めて身体に負担をかける毎日を送っている高齢者も多いのではないかと心配な気がします。健康寿命を延ばすためにも、高齢者は論理的に判断して布団からベッドへの乗り換えを前向きに検討するべきと考えますが、皆様、そして皆様のご両親はいかがでしょうか?