明治・大正時代の新聞がテレビに映ると、現代とは違って漢字に全てフリガナ(ルビ)が振ってあることに気づきます。(近代義務教育が普及する過程だったことから必要だったのかな)と想像していますが、現在の日本語の文章においても、漢字にフリガナ(ルビ)を振ることは、単に読み方を補助するだけでなく、様々な効果が期待できると思っています。子供向けの百科事典や少年少女向けのマンガについては、今でもフリガナがついているようですので、もっと広く一般書籍でもフリガナを振ることは比較的容易にできるはずです。以下に具体例を交えながら利点を解説していきますのでご覧ください。
なお、「ヨミガナ」というのは難読漢字に振る読み方のこと自体であり、「フリガナ」というのはヨミガナを難読漢字のすぐ上や横に印刷することです。インターネット上の文章で普通は上や横にヨミガナをつけられないので、カッコで続けるかたちを目にしますが、これはヨミガナですがフリガナとは呼ばないわけです。また、印刷技術用語としてフリガナのことを「ルビ」と呼び習わしています。
1. 紙媒体にとってインターネットより優位にできる方策
先にも述べましたが、インターネット上の日本語のテキストデータについてはフリガナを振ることは容易ではありません。一方、紙媒体ならば、フリガナを印刷することで、読者の理解を助けることができるため、インターネットよりも親切な情報提供が可能になります。
この20年くらいの電子書籍の普及を一因として、駅前にあった独立経営の書店が全国的に減少している現状に対して、少しは有効な対策となるでしょう。(紙媒体のインターネット購入は変わりませんが....)
2. 子供たちの漢字学習を促進
子供向けのマンガや図鑑、絵本などでフリガナ付きの書籍が一般的になれば、単純に読書のハードルが下がることになり、機会が増えることで、自然と漢字の読み方を習得し、豊かな読書体験を提供することにつながります。学校の国語の漢字教育以外の場面で、自然な漢字学習ができることになるでしょう。特に、マンガは子供たちにとって身近な存在であり、楽しみながら漢字学習ができる絶好の教材になるはずです。
漢字学習の指導要領としては、個々の漢字について「読めるけれど書けない」という事例を忌避しているのかもしれません。しかし、書くことについてはパソコンの普及によって、比重が下がったという現実を受け止めて、割り切っても考えても良いと考えます。
3. 書き手の表現の幅を広げる
書き手は、難読漢字を使用することで読者の理解を妨げることを懸念し、表現を忖度して標準的あるいは安直な言葉を選んでしまうことがあります。しかし、フリガナをふることが選択できれば、そのような心配がなくなり、より自由に表現できるようになります。
例えば、「瀟洒(しょうしゃ)」という言葉は、意味は分かっていても読み方が分からないという人が多いかもしれません。しかし、フリガナをふることで、この美しい言葉を気兼ねなく使用できます。
4. 漢字とひらがなの混在表記を解消
「障がい者」(しょうがいしゃ)のように、一部の漢字をひらがなで表記する表記を時々見かけますが、これは見た目のバランスが悪く、読みにくさを感じることがあります。フリガナを振ることで、このような混在表記を解消し、統一感のある美しい文章にすることができるはずです。「障碍者」と表記し、フリガナをふる方が、見た目にも美しく、読みやすい文章になると思いませんか?
5. 日本語の表現を豊かにする
フリガナは、漢字の読み方を補助するだけでなく、漢字の意味合いについても自然に理解が進み、言葉のニュアンスやリズムを伝える効果もあります。様々な漢字にフリガナを振ることで、日本語の表現はさらに豊かになるでしょう。
例えば、「きらめき」という言葉は、ひらがなで表記しても美しいですが、「煌めき」と表記し、フリガナをふることで、より視覚的に美しさが際立つ感じます。また、「本気」と書いて「マジ」と読ませるといったパターンで面白味を増す表現方法も、更に広められるでしょう。
6. 難読漢字の要求には社会として限度がある
テレビのクイズ番組の漢字テストで難読漢字が出題されると、学生時代には得意としていた人であっても、かなり驚くような難読を見ることがあるはずです。そもそも人名や地名については、どうしても特別な固有の読み方が決まっているので、その都度暗記するしかない性質のものでしょう。ですから人名と地名についてだけでも、フリガナを義務化してほしいとすら思っています。
他に、事例としては少ないですが、例えば「施行」という漢字は、建設関係者は「せこう」と読み、法律関係者は「しこう」と読むといったように、同じ漢字でも分野によって読み方が変わる言葉もあります。これも区別して暗記する他ない性質のものですので、正確な判読のためにはいっそフリガナを振ったほうが良いはずです。
また、専門用語の中にも難しい漢字が使われることは多いので、外来語であれば最近はもはや翻訳せずにカタカナ語や英語のままとする傾向が生まれているようです。
なお、外国人の日本語学習者には、ひらがなは確実に読めるという水準の人は多いそうで、フリガナが普及すれば世界的に日本語の記事に触れる機会が増えることになり、わずかながらでも日本の存在価値が向上することが期待できます。
フリガナは日本語の可能性を広げる
フリガナは、単なる読み方の補助ではなく、日本語の可能性を広げる力を持っています。子供から高齢者、日本語学習者まで、あらゆる人が日本語を理解し、楽しめるように、フリガナの活用を積極的に検討してみてはいかがでしょうか。
以上