AirLand-Battleの日記

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入門「誘導尋問」

 ドラマや映画の取り調べや法廷のシーンで、証人が質問に答えている場面を見たことがあるでしょう。時に、証人があたかも台本を読んでいるかのように、警察や弁護士の意図通りの証言をしていることがあります。また、討論番組やインタビューなどでも、「それは誘導尋問ではないですか?」といった言葉が出ることがあります。「誘導尋問」は、尋問・質問において非常に強力な武器となる一方で、真実を歪める危険性も孕んでいます。この記事では、誘導尋問の基本から、その見抜き方、そして対策までを、初心者にも分かりやすく解説したいと思います。

 

1. 誘導尋問とは?

 誘導尋問とは、質問者が証人に特定の答えを誘導するような質問のことです。具体的には、以下のような特徴があります。

  • 質問の中に答えが暗示されている:「あなたは、犯人が青い服を着ていたのを見ましたね?」
  • 肯定・否定で答えられる質問:「あの時、あなたは現場にいなかったのですね?」
  • 質問者の意図が明白:「あなたは、彼が嘘をついていると思ったのですね?」

 これらの質問は、証人が自分の記憶や考えに基づいて自由に答えることを妨げ、質問者の意図する方向に証言を誘導する可能性があります。

 もちろん場合によっては質問者(尋問)がまったくの好意から、より答え易いように、質問の範囲や主旨がより分かりやすいようにという意図で、こうした表現を借りて質問していることもあるでしょう。しかし、結果として得られた証言や説明についてはデメリットが生じる懸念があるのです。

2. 誘導尋問のメリットとデメリット

 誘導尋問は、尋問者にとって以下のようなメリットがあります。

  • 証言のコントロール:証言を自分の意図する方向に誘導できる。
  • 尋問の効率化:短時間で必要な証言を得られる。
  • 証言の矛盾の指摘:証言の矛盾を際立たせ、証言の信用性を下げられる。

 一方で、以下のようなデメリットも存在します。

  • 真実の歪曲:証人の記憶や証言を歪め、真実の解明を妨げる。
  • 不当な結論:証言に基づいて不当な結論が導かれる可能性がある。
  • 証人への不当な圧力:証人に精神的な圧力を与え、萎縮させる可能性がある

 仮に質問者が、答え易いように、質問の範囲や主旨がより分かりやすいようにという意図があったとしても、誘導尋問を通じて得られた答えはしばしば、真実の全体像、本質的な結論、現実に存在した多くの情報を掴めないという危険性があります。

 

3. 誘導尋問の見抜き方

 第三者が証言の文書を読む場合、または尋問に答えて証言する場合、あるいは何かの情報を知るために尋問する場合に、それが「誘導尋問」のなるか否かを判断するには、以下の点に着目・留意すると良いでしょう。

  • 質問の形式
    • 肯定・否定で答えられる質問が連続していないか
    • 質問の中に答えが組み込まれていないか
    • 特定の言葉やフレーズの繰り返しがないか
  • 証言の内容
    • 証言が曖昧で具体性に欠けていないか
    • 証言の中に矛盾点がないか
    • 証言が時間の経過とともに変化していないか
  • 尋問の状況
    • 尋問者が証人に対して威圧的な態度を取っていないか
    • 尋問の目的が、真実の解明ではなく、特定の証言を引き出すことにないか
    • 主尋問か反対尋問か

4. 誘導尋問への対策:証人としてできること

 特にあなたが証人として誘導尋問を受けていると感じた場合には、以下の対策を講じることができます。

  • 安易に肯定・否定しない:「はい」「いいえ」で答えられる質問には、安易に答えない。
  • 曖昧な表現を避ける:「たぶん」「おそらく」などの曖昧な表現は避け、明確に証言する。
  • 自分の言葉で説明する:質問者の言葉に誘導されず、自分の言葉で説明する。
  • 必要に応じて訂正を求める:不正確な証言をしてしまった場合は、速やかに訂正を求める。
  • 弁護士に相談する:誘導尋問への対応に不安を感じる場合は、弁護士に相談する。

5. 誘導尋問の具体例

 以下に、誘導尋問の具体例をいくつか紹介します。

  • 「あなたは、犯人が凶器で人を刺したのを見ましたね?」
  • 「あの時、あなたは被害者と激しく口論していたのですね?」
  • 「あなたは、彼が嘘をついていると確信したのですね?」

 これらの質問は、証人に特定の答えを誘導し、証言を歪める可能性があります。

 

 

 誘導尋問は、尋問する側にとって強力な技術である一方で、真実を歪める危険性も孕んでいることを十二分に理解しておく必要があります。また証人としては、誘導尋問を見抜き、自分の記憶や認識に基づいて正確に証言することが重要です。この記事が、誘導尋問についての理解を深め、適切な対策を講じるための一助となれば幸いです。