AirLand-Battleの日記

思い付きや素朴な疑問、常識の整理など、特段のテーマを決めずに書いております。

ちょっと待った「多数決」

 「多数決」と聞くと、学校のクラス決めや、選挙などを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。たしかに民主主義社会において、多数決は意思決定の重要かつ信頼できる手段の一つとして認知されています。しかし、多数決は本当に常に正しいと盲信していて良いのでしょうか?今回は、多数決のメリット・デメリット、そして私たちが多数決とどのように向き合っていくべきかを考えていきたいと思います。

多数決とは?

 「多数決」とは、集団で何かを決定する際に、参加者の過半数の賛成によって決める方法です。民主主義の原則に基づき、多くの人の意見を反映できる合理的な手段として、様々な場面で用いられています。一人につき~天才も無法者でも~一票の議決権があるので非常に公平と考えられますし、一人ひとりの判断で~しばしば派閥の指示や部外者の圧力もあったりしながら~投票するので自由意思に基づく決定と受け止めることができます。

多数決のメリット

  1. 迅速な意思決定: 多数決は、複雑な議論を省略し、票数という明快な数字をもって迅速に結論を出すことができます。特に、緊急性の高い問題や、時間的制約がある場合には有効です。
  2. 公平性: 参加者全員に平等な投票権が与えられるため、一見すると公平な方法に思えます。仮にもしも希望した決定に至らなくとも、全体にとっては少数派や例外であったと一旦は自認せざるをえなくなります。
  3. 参加意識の向上: 自分の意見が反映されることで、集団への参加意識や責任感が生まれます。(これは、いきなり投票を迫られるような場合ではなく、議案策定の過程において自らの意見を盛り込むような議事運営が前提ですね。)

多数決のデメリット

  1. 少数意見の無視:  多数派の意見が優先されるため、少数派の意見や権利が軽視される可能性があります。以前にインターネット上で、「10階建てのマンションのエレベーター補修費について、多数決で1階の住民に負担させる。エレベーターを利用しない1階の住民が「横暴で不合理」といくら訴えても多数決では勝てない」という仮説を読んだことがありました。決定だけでなく、少数派の提言や意見は延々と後回しにされてしまい、議論もされないという不利があるでしょう。
  2. 感情的な決定:  十分な議論がないまま、感情や雰囲気に流されて決定がなされることがあります。実際には異なる価値観や視点に基づくや意見が潜んでいるのにも関わらず、それに気付かずに満場一致になってしまう事態を「満場一致のパラドックス」と呼びます。
  3. 「コンドルセのパラドックス」:  三つ以上の選択肢がある場合、多数決の組み合わせによっては、循環的な結果(ジャンケンのような状況)が生じ、明確な勝者が決まらないことがあります。
  4. 集団思考:  周囲に同調してしまい、少数意見が発言しにくい状況になることがあります。人間社会ではどうしても仲良しグループ(党派・派閥)というものは発生してしまうものであり、そこから投票行動への拘束が求められることになりがちです。

多数決の歴史

 多数決の起源は古代ギリシャの民主政にまで遡ります。しかし、当時は現代のような厳密なルールはなく、身分や財産によって投票権が制限されていました。近代に入り、フランス革命やアメリカ独立革命を経て、普通選挙が実現し、多数決は民主主義の重要な要素として確立していきました。

多数決と少数意見

 上記の「多数決のデメリット」でも触れましたが、多数決において常に課題となるのが少数意見の扱いです。少数意見の中には、将来的に多数派となる可能性を秘めた意見や、社会にとって重要な提言が含まれていることがあります。

少数意見を尊重するために

  1. 議論の場の確保:  少数意見を持つ人が自由に発言できる雰囲気を作り、議論の機会を保障することが重要です。
  2. 多様性の尊重:  異なる意見や価値観を認め合い、多様性を尊重する姿勢が求められます。
  3. 制度設計:  少数意見を考慮した制度設計や、少数派の権利を保護する仕組みが必要です。

私たちは多数決とどう向き合うべきか

 多数決は、民主主義社会において重要な意思決定手段の一つですが、万能ではありません。私たちは、多数決のメリット・デメリットを理解し、状況に応じて適切な判断を下す必要があります。

  1. 批判的思考:  多数決の結果を鵜呑みにせず、常に批判的な視点を持つことが大切です。
  2. 議論への参加:  積極的に議論に参加し、自分の意見を表明することで、より良い合意形成に貢献できます。
  3. 少数意見への配慮:  少数意見に耳を傾け、多様な意見を尊重する姿勢が求められます。

 

 日本の公教育では「議論することは大切です。多数決には従いましょう。」といったレベルの説明に終始していて、根底にある考え方を定着するこtができていないように感じます。まして、日本の現実社会や組織ではワンマン経営や家父長的風土も少なからず存在しており、民主主義は決して根付いてはいないと感じます。

 「多数決」を呪文としてでなく、その必要性と限界を十分理解することが必要と感じています。この拙文によって読者の皆さんの理解が深まったり、再考する機会になっていれば幸いです。