AirLand-Battleの日記

思い付きや素朴な疑問、常識の整理など、特段のテーマを決めずに書いております。

「素質か才能か?」だけではない成功要因

 陸上競技や球技、格闘技などの”スポーツ”や、歌唱や楽器演奏、舞踊といった”芸術”に関する成功要因の議論で、しばしば「素質か才能か?」という論点が挙げられますが、辞書で調べると「素質」と「才能」はほぼ同じ意味であって、厳密な議論になっていないように感じられることが多いです。個人的な感覚ではどちらも先天的な特質、あるいは就学前の時期に意図せず獲得される性質であって、「素質」は肉体面の優位点、「才能」は精神・性格面での優位点を指しているのではないかと受け止めています。いずれにせよしばしば挙がる論点なので、もうそろそろ議論の前に定義付けをしておいて欲しいものです。

 更にもう少し考え直してみると、成功に関する要因は「素質」や「才能」だけで収まるものではありません。他の様々な要因が複雑に絡み合い、それぞれの人の可能性を広げたり、狭めたりしています。ここでは、成功を左右する要因について、すこし深く考えてみたいと思います。

 

 「スポーツや芸術で成功するためには、生まれ持った才能がすべてだ」としばしば語られます。特に不出生のスターが活躍するのが報じられるときにはそうなりがちです。もちろん、才能は重要な要素のひとつです。しかし、それだけで成功が決まるわけではありません。成功に至るには、素質や才能のにも様々な要因が複雑に絡み合っているものであって、それらが当事者の可能性を広げたり、狭めたりしていると想定しなければなりません。

成功を左右する3つの要因

成功を左右する要因は、ここでは大きく分けて以下の三つに分類しておきます。

  1. 環境要因
  2. 個人的要因
  3. その他

それぞれの要因について、詳しく見ていきましょう。

1. 環境要因:才能を育む土壌

 どんなに素晴らしい先天的・遺伝的な才能を持っていても、それを開花させるための「環境」がなければ、成功は難しいでしょう。

  • 家庭環境
    • スポーツや芸術への理解や支援 ←親が好きな種目を教え始めるということが、その道にはいるきっかけになっていることは非常に多いと感じます。
    • 経済状況(用具購入、遠征費など) ←練習のために金銭的な負担のかからない種目と裕福な家庭でなければできない種目があります。例えばハープが家にある家庭とそうでない家庭の差は大きいはずです。
    • スポーツや芸術に触れる機会 ←住んでいる地域や国によって、盛んなスポーツや芸術は異なりますし、家族が家庭教育に熱心か否かも条件になるでしょう。
  • 教育機会 このあたりは先進国か否か、都市部か否か、その地域の歴史的背景が条件になると考えられます。
    • 質の高い指導者や練習環境
    • スポーツ医科学のサポート
    • 学校や地域社会のスポーツ文化
  • 地域社会
    • スポーツ施設や芸術施設の充実度
    • 地域住民のスポーツや芸術への関心
    • スポーツクラブや芸術団体の活動

 これら三つの環境要因は、才能の有無に関わらず、誰もが平等に享受できるものではありません。しかし、環境に恵まれなかったとしても、後天的な努力によって才能を開花させる人がいるのも事実です。

2. 個人的要因:才能を開花させるための努力

 先天的な才能を開花させるためには、もちろん本人の後天的な努力が不可欠です。これを個人的要因として、さらに以下の2つに分類してみましょう。

  • 身体の先天的・遺伝的特質
    • 身体能力(筋肉の質や量、骨格、神経系の発達など)
    • 感覚能力(視覚、聴覚、触覚、空間認識能力など)
    • 生理学的要因(ホルモンバランス、代謝能力、回復力など)
  • 精神の後天的・獲得形質
    • 認知能力(学習能力、記憶力、思考力、判断力など)
    • 感情制御(ストレス耐性、モチベーション維持など)
    • 社会的スキル(コミュニケーション能力、チームワークなど)
    • 経験(過去の成功体験、失敗体験、様々な文化や価値観に触れる経験)

 スポーツの種類や芸術分野によって「先天的な要因」に関する比重(重要度)が異なります。例えば、短距離走では瞬発力や反応速度が重要ですし、音楽では音感やリズム感が重要です。国家事業でスポーツや芸術の担い手を育成している場合には、幼少期から先天的要因を備えた人材の選抜制度を用意していると聞きますね。

 「後天的な要因」は、努力や経験によって獲得・向上させることができます。例えば、練習やトレーニングによって集中力や判断力を高めたり、心理学的なトレーニングによってストレス耐性を向上させたりすることができることが知られています。

 近年、日本で活躍しているプロのサッカー選手などにおいては、幼少期からプロチームの育成スクールや海外留学を経験し、高校生くらいでプロチームと契約した選手がいる一方で、大学卒業まで日本の教育機関に基盤をおいて成長した選手もいます。後天的な努力型の選手、精神的に成熟した選手も活躍できるというのは好ましいことと(個人的には)感じています。

 

3. その他:成功を後押しする要素

 上記(環境と個人)以外にも、成功を左右する要素は存在します。これらの要素は、努力だけではコントロールできない部分もあります。しかし、常に準備を探求を怠らず、チャンスを最大限に活かすことで、成功に近づくことができます。

  • 技術
    • 競技や芸術に必要な技術の高さ
  • 戦略
    • 試合運びや戦術、芸術における表現方法
  • 情報
    • 対戦相手や芸術に関する情報収集や分析
    • 怪我の有無、試合や選考の巡り合わせ

 

幼少期からの専門的エリート教育は必要か?

 成功を左右するために先天的な要因がかなり影響があると仮定すると、多くのスポーツや芸術については「幼少期からの専門的エリート教育」が不可欠ということになるのでしょうか?

 幼少期からの専門的エリート教育は、才能を早期に開花させ、技術習得を効率化し、競争優位性を確立する上で有利に働く可能性が高いと考えられています。例えば体操競技やバレエ、将棋、音楽全般については、ほとんど幼少期から厳しい練習を積んでいると聞きます。

 しかし、それはあくまで可能性の話であり、不可欠というわけではありません。実際には、ある程度成長してからでも、自身の特性を理解し、適切な努力をすることで、先天的な能力を最大限に活かすことは十分に可能です。バレリーナのシルビィ・ギエムは体操競技から転向したそうですし、アメリカのバスケットボール選手のティム・ダンカンは水泳から転向して大きな成果をあげています。先天的な特質と幼少期に獲得した能力を基礎にして、その後にチャンスを掴むことも大いに可能と言えるのではないでしょうか。

 

成功のために、私たちができること

 では、成功するために、私たちは何をすれば良いのでしょうか? 以下の考慮を意識しながら、日々の努力を続けることが、成功への鍵となります。

  1. 自身の特性を理解する
    • 自分の強みや弱みを把握し、得意な分野で勝負する
  2. 目標を設定し、努力を継続する
    • 具体的な目標を設定し、計画的に努力を重ねる
  3. 環境を整える
    • 質の高い指導者や練習環境を見つけ、才能を伸ばす
  4. 多様な経験をする
    • 様々な経験をする事で、自身の可能性を広げる
  5. 周囲の人々との関係を大切にする
    • 家族や友人、指導者など、周囲の人々のサポートは不可欠

 

 スポーツや芸術における成功は、決して簡単なものではありません。しかし、才能だけでなく、環境や努力、周囲の人々のサポートなど、様々な要因が複雑に絡み合って生まれるものです。この記事を読んで、少しでも多くの方が自身の可能性を信じ、夢に向かって挑戦する勇気を持っていただけたら深甚です。