近年、地震や台風などの自然災害が多発しており、防災意識が高まっています。防災グッズをまとめた「防災袋」を備えている方も多いのではないでしょうか。しかし、ひとたび火災に遭えばその防災袋も焼けてしまうわけで、着の身着のままで生き残っても頼りになりません。大地震や台風と言った広域・大規模災害を想定した防災用品の準備については、いろいろ記事がありますが、個々人の火災対策についてはどうも情報が少ないようですので、ここで統計データも交えながらまとめて解説してみようと思います。是非ご参考としてください。
日本の火災発生状況:統計データから見る現状
総務省消防庁の「火災統計」によると、令和5年(2023年)の総出火件数は38,672件、火災による死者数は1,503人にのぼります。出火原因の上位は、「たばこ」「たき火」「こんろ」など、私たちの日常生活に潜むものが多くを占めています。また、火災は空気が乾燥する冬から春先にかけて多発する傾向があり、住宅火災による死者の多くは高齢者であるというデータもあります。
これらの統計データから、交通事故などに比べると火災は比較的珍しい不幸・苦難に映るかもしれませんが、決して他人事ではなく、誰もが遭遇する可能性があることもわかります。
火災で本当に必要な対策
まず考えるべきは、火災から身を守るための「防火対策」となりますが、それには以下のような対策を挙げることができるでしょう。
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住宅用火災警報器の設置
火災の早期発見に最も有効なのは、住宅用火災警報器の設置です。火災警報器は、煙や熱を感知し、大音量の警報音で火災の発生を知らせてくれます。これにより、初期消火や避難を迅速に行うことができます。
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消火器の設置と使用方法の習得
初期消火に有効な消火器も、火災対策として重要です。消火器は、火災の規模が小さいうちに鎮火させるために使用します。しかし、消火器は正しく使用しなければ、効果を発揮しません。定期的に消火器の使用方法を確認し、家族全員が使えるようにしておきましょう。
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避難経路の確認と避難訓練
火災発生時、安全に避難するためには、避難経路の確認が不可欠です。自宅や職場、学校などの避難経路を事前に確認しておきましょう。また、定期的に避難訓練を行い、火災発生時の行動をシミュレーションしておくことも大切です。
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火災保険への加入
火災によって家や家財を失った場合、生活再建には多額の費用がかかります。火災保険に加入しておくことで、経済的な負担を軽減することができます。保険内容をよく確認し、必要な補償を備えておきましょう。
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日頃からの防火対策
火災の原因の多くは、私たちの日常生活の中に潜んでいます。コンロの消し忘れ、タバコの不始末、電気コードの不適切な使用など、日頃から防火対策を徹底することが、火災予防につながります。
金銭面で簡単にできる備え
つい最近、大手銀行の貸金庫の中身が長期間にわたって盗まれ放題であったというニュースがありましたが、以下のような情報について書類・メモならば貸金庫でもインターネット上でも保管しておくことで、生活再建がいくらか円滑になるのではないでしょうか。意外に自身の財産(と負債)の全体をこまごまとは把握していないこともあるので、注意が必要です。
なお、肉親が死傷した場合には「精神面」の苦痛や喪失となります。こちらは専門家によるカウンセリングとケアを受けることを考えておきましょう。
- 銀行口座番号
- 証券口座番号
- クレジットカード番号
- 保険契約番号
- マイナンバー
- 不動産の権利証
- 緊急連絡先 など
火災後の生活再建のため公的制度
万が一、火災に遭ってしまった場合、生活再建のために以下のことを行いましょう。
大まかな情報は各都道府県の消防庁のホームページで、火災後の罹災証明などといった書類手続きとともに生活再建に関する案内も記載があるようです。しかし住宅の手配などは市区町村が担当しているようで、詳しい案内は個別に調べるしかないようです。
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罹災証明書の発行
火災による被害の程度を証明する「罹災証明書」は、保険金の請求や各種支援を受ける際に必要となります。
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保険会社への連絡
火災保険に加入している場合は、保険会社に連絡し、保険金の請求手続きを行いましょう。
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自治体の支援制度の活用
自治体では、住宅の再建や生活必需品の支給など、被災者向けの様々な支援制度を用意しています。
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地域の支援団体との連携
地域の社会福祉協議会やボランティア団体などが、生活再建を支援してくれる場合があります。
火災は、私たちの生活を一瞬にして奪い去る恐ろしい災害です。住宅用火災警報器や消火器の設置、避難経路の確認など、日頃からの備えが何よりも大切です。統計データが示すように、火災は決して他人事ではありません。万が一の火災に備え、今一度、ご自身の火災対策を見直してみてはいかがでしょうか。