AirLand-Battleの日記

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リーダーシップの育成は日常から ~日本に必要な組織活性化のために~

 日本社会ではあまり強力な(独断先行のような)リーダーシップが求められない組織風土がある一方で、困難な時期になると強力な(大きな方向転換のような)リーダーシップを待望する意見が湧き上がったりするようです。 今回はこの「リーダーシップ」の育成について、幼少期から成人後まで、そして組織全体での取り組みまでを整理し、「リーダーシップの育成は日常から」というテーマでじっくり解説していきたいと思います。

 

なぜ今、日本の組織にはリーダーシップが求められるのか

 近年、日本の社会や経済は、グローバル化の波、テクノロジーの急速な進化、そして働き方の多様化など、かつてないほどの変化の波に晒されています。終身雇用制度の変容、少子高齢化による労働人口の減少といった構造的な課題も深刻です。このような状況下で、従来の年功序列やトップダウン型の組織運営では、変化に柔軟に対応し、持続的な成長を実現することが難しくなってきています。

 そこで重要となるのが、組織の活性化です。活性化された組織は、変化を恐れず、新しいアイデアを生み出し、困難な課題にも果敢に挑戦する力を持っています。そして、その活性化のエンジンとなるのが、一人ひとりのリーダーシップなのです。

 これまでの日本社会では、どちらかというと集団の和を重んじ、目立つことを避ける傾向がありました。強力なリーダーシップよりも、協調性や合意形成が重視される場面も多かったかもしれません。しかし、これからの時代は、それぞれの個性や能力を最大限に引き出し、組織全体で目標達成に向けて進んでいく、よりダイナミックな組織運営が求められます。そのためには、役職や立場に関わらず、誰もがリーダーシップを発揮できるような土壌を育む必要があるのです。

 

リーダーシップ育成の第一歩は「幼少期の経験」から

 リーダーシップの育成は、決して特別な研修やセミナーだけで成し遂げられるものではありません。その根っこは、日々の生活の中で、小さな成功体験や他者との関わりを通して、少しずつ育まれていくものです。特に幼少期の経験は、リーダーシップの基礎となる重要な要素を育む上で、かけがえのない機会となります。

 例えば、年下の子どもの世話を焼く経験は、責任感や人を思いやる心を育みます。友達との間で学級委員やグループリーダーといった役割を担うことは、周りをまとめたり、自分の意見を伝えたりする練習になります。もちろん、幼い子どもたちだけでは、ルールを理解できなかったり、喧嘩をうまく仲裁できなかったりすることもあるでしょう。そんな時には、大人が適切なアドバイスやサポートを提供することが大切です。大人の関わりを通して、子どもたちは他者の気持ちを理解すること、対話による解決方法を学ぶことができるのです。

 

多感な「青年期」こそ、リーダーシップの試練と成長のチャンス

 幼少期を経て青年期に入ると、自己主張が強まり、多角的な視点を持つようになる一方で、反抗期なども経験し、人間関係も複雑化します。この時期は、リーダーシップを発揮する上で、幼少期とは異なる困難に直面することが増えます。

 例えば、チーム内で意見が対立したり、メンバーのモチベーションが維持できなかったりといった問題が起こりやすくなります。しかし、このような困難な状況を乗り越えることこそが、青年期のリーダーシップを大きく成長させるチャンスとなります。

 この時期のリーダーには、メンバーの多様な意見を尊重し、根気強く対話することで合意形成を図る力、感情的な対立を冷静に仲裁する力、そして何よりも、困難な状況でも諦めずに目標達成に向けてチームを鼓舞する力が求められます。大人は、頭ごなしに指示するのではなく、彼らが自ら考え、解決策を見つけ出すためのサポートに徹することが重要です。成功体験だけでなく、失敗から学ぶ機会を与えることも、成長には不可欠です。

 

「成人後」のリーダーシップ開発:担当者からリーダーへの意識改革

 社会人になり、昇進などをきっかけに初めてリーダーの役割を担う人も多いでしょう。しかし、これまで担当者として自分の業務をこなしていればよかった立場から、チーム全体の成果に責任を持つリーダーへと役割が大きく変わるため、新たな知識やスキル、そして何よりも意識改革が必要となります。

 担当者の業務は、個人の専門知識やスキルを活かしてタスクを遂行することが中心ですが、リーダーの業務は、チーム全体の目標達成のために、メンバーの能力を最大限に引き出し、組織を動かすことが中心となります。この段階でのリーダーシップの育成・教育には、以下のような取り組みが有効と考えられます。

 組織としても、リーダーの選抜と育成には戦略的な視点が不可欠です。単に成績優秀な担当者を昇進させるだけでなく、リーダーシップの適性のほか、潜在能力や育成可能性を多角的に評価する必要があります。また、階層別研修やメンター制度、コーチングなどの育成プログラムを提供し、リーダーの成長を継続的にサポートしていくことが重要です。

  • リーダーシップに関する知識の体系的な学習: 書籍、研修、セミナーなどを通して、リーダーシップの理論や具体的なスキル(コミュニケーション、コーチング、問題解決、意思決定など)を学びます。
  • ロールモデルからの学び: 尊敬できる上司や先輩リーダーの行動を観察し、自身のリーダーシップに取り入れられる点を見つけます。
  • OJT(On-the-Job Training)による実践: 日々の業務の中で、意識的にリーダーシップを発揮する機会を作り、実践を通して学びます。
  • 内省とフィードバックの活用: 自身の行動を振り返り、うまくいった点や改善点を見つけ出し、上司や同僚、部下からのフィードバックを積極的に受け止め、成長につなげます。

 

日本社会の活性化に向けて:誰もがリーダーシップを発揮できる組織へ

 これからの日本社会が、変化の波を乗りこなし、持続的な成長を実現していくためには、組織の活性化が不可欠です。そして、その鍵を握るのが、誰もがリーダーシップを発揮できる組織文化の醸成です。

 トップダウン型の指示命令系統だけでなく、メンバー一人ひとりが主体性を持ち、それぞれの強みを活かしてチームに貢献する。そのような組織では、イノベーションが生まれやすく、変化への対応力も高まります。そのためには、組織全体で以下のような取り組みを進めていく必要があるでしょう。

  • フラットな組織構造の導入: 意思決定のスピードを高め、メンバーの意見が反映されやすいように、階層を減らした組織構造を検討します。
  • 権限委譲の推進: メンバーに責任と権限を与えることで、主体的な行動を促し、リーダーシップを発揮する機会を増やします。
  • 多様な働き方の尊重: 個々のライフスタイルや価値観に合わせた柔軟な働き方を支援することで、多様な人材の能力を最大限に引き出します。
  • 心理的安全性の確保: メンバーが安心して意見を述べたり、新しいことに挑戦したりできるような、心理的に安全な環境を作ります。
  • リーダーシップ教育の継続的な実施: 階層別、テーマ別の研修プログラムを提供し、組織全体のリーダーシップレベルの向上を図ります。
  • 成功事例の共有と称賛: メンバーの主体的な行動やリーダーシップの発揮によって生まれた成功事例を共有し、組織全体で学び、称賛する文化を醸成します。

 

結局、「日常」こそがリーダーシップを育む土壌

 リーダーシップは、特別な才能を持った一部の人だけに必要なものではありません。家庭、学校、地域社会、そして職場といった、私たちの日常のあらゆる場面で必要とされる力です。幼少期の小さな役割から、青年期の困難な経験、そして成人後の責任ある立場での挑戦を通して、少しずつ、しかし確実に育まれていくものです。

 これからの日本社会に必要なのは、一部のカリスマ的なリーダーシップではなく、それぞれの場所で、それぞれの役割を担いながら、主体的に考え、行動し、周りを巻き込み、目標達成に向けて貢献できる、「誰もがリーダーシップを発揮できる社会」です。

 そのためには、私たち一人ひとりが、日々の生活の中でリーダーシップについて一度考えて意識するようにし、小さなことから実践していくことが大切です。そして、組織は、そのような個々のリーダーシップの芽を育み、開花させるための環境を整備していく必要があります。

 「リーダーシップの育成は日常から」という意識を持ち、私たち一人ひとりが、より良い未来のために、それぞれの場所でリーダーシップを発揮していきましょう!