AirLand-Battleの日記

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すべての法的罰則や料率などは機械的・定期的に改正を

 最近の政治経済のニュースで話題になっている「103万円の壁」の議論を聞いているなかで、そもそも所得税法で定めている「決まり事」が、ずっと時代の変化に置いていかれているのが問題の根幹にあるのではないか、という疑問が湧き上がってきました。今日は、この問題意識をさらに深掘りし、いっそ他の法令上の「決まり事」は全て必ず見直すという手続きにしてほしいという結論に至った私の考えを、皆さんと共有したいと思います。

 

時代に取り残された「決まり事」いろいろ

 私たちの社会は、常に変化し続けています。経済状況は変動し、人々の価値観も多様化しています。技術革新は目覚ましく、新たな社会問題も次々と生まれています。しかし、目を向けてみると、法律で定められた罰金や料率、対象範囲などが、何十年も前の設定からほとんど変わっていないケースが少なくありません。

 

 ひとつの例として、経済評論家の高橋洋一氏が指摘していたのは、公共投資の「社会的割引率」です。2004年頃に4%に設定されたこの数値は、ゼロ金利が続く2025年現在においてもそのまま。これは、公共事業の評価を歪め、時代に合わない投資判断を招く可能性があると警鐘を鳴らしています。

 また上でも述べた、所得税の配偶者控除における「103万円の壁」も、1980年代後半に設定されたままの金額が据え置かれてきた代表例です。当時の社会状況や夫婦の働き方を前提としたこの制度は、共働き世帯が増加した現代においては、女性の就業調整を招き、労働力不足の一因となっているとの指摘があります。設定根拠が曖昧なまま長期間放置された結果、社会の変化に対応できず、歪みを生じさせているのです。

 さらに、犯罪に対する罰金刑や刑期についても同様の問題があります。1992年に政治家の金丸信氏が巨額の脱税疑惑(5億円の闇献金)に関して、20万円程度の罰金で済んでしまった事例は、その最たるものでしょう。当時の法定刑が低かったことや情状酌量などが理由として考えられますが、国民の常識からかけ離れた軽い罰則は、法への信頼を大きく損ないました。また逆に、不条理なまでに重い罰則が設定されたままになっている条文もきっとあるでしょう。

 

 経済状況が大きく変化した現代において、過去に設定された罰金額や刑期が、犯罪抑止力や不当な利益の剥奪という本来の目的を果たせているのか、疑問を感じざるを得ません。また、刑法犯の実態や治安状況、国民の意識を考慮すると、例えば性犯罪の再犯率が高いというのが統計的事実であれば、その刑期を延長するということも当然ひとつの施策候補になるでしょう。

 

 一方で、民法や会社法のように、社会経済活動の変化に合わせて定期的に改正が行われている法律も存在します。これらの法律は、社会のニーズに合わせてアップデートされることが定例化できており、その実効性を保っています。これを考えればなおのこと、なぜ罰金や料率といった、私たちの生活に直接的な影響を与える「決まり事」は、同じように定期的な見直しが行われなというのが疑問になります。

 

なぜ「機械的・定期的な改正」が必要なのか

 「すべての法的罰則や料率などは機械的・定期的に改正すべきだ」と考えた理由は、以下の2点に集約されます。

  1. 時代の変化への適応:  社会や経済状況は常に変化しており、法的罰則や料率もそれに合わせてアップデートされなければ、実効性を失い、社会の歪みを増幅させる可能性があります。機械的・定期的な改正を行うことで、常に最新の状況に合わせた制度を維持することができます。

  2. 設定根拠と変更理由の明確化:  機械的・定期的な改正を行うためには、それぞれの罰則や料率がどのような根拠に基づいて設定されたのか、そしてどのような理由で変更されたのかを明確にする必要があります。これにより、制度の透明性と一貫性が高まり、国民の理解と納得を得やすくなります。曖昧なまま放置されることを防ぎ、より公正な制度運営につながります。

 

 大きな問題が表面化しない限りは法改正の必要は無い、という方針では、いつまでたっても現状維持になるのは上の実例のとおりです。立法(国会)と行政(官僚組織)の現実的な事務作業の負担はかなりのものになるのかもしれませんが、それでも国家の理念として全ての法令は必ず定期的に見直す必要があると考えています。もう、条文中に数字があれば全て検証の対象とするぐらいでちょうど良い、と言いたいくらいです。

 

機械的・定期的な改正の具体的な方法

 では、具体的にどのように「機械的・定期的な改正」を進めていくべきでしょうか?

まず、各罰則や料率の設定根拠を徹底的に洗い出し、明文化する必要があります。過去の議事録や関連資料を精査し、どのような考えに基づいて現在の水準が決定されたのかを明らかにする必要があります。

 次に、定期的な見直しのサイクルと基準を設定することが重要です。例えば、物価変動率や平均所得の変化、犯罪の再犯率などの客観的な指標に基づき、一定期間(例えば5年ごと)に自動的に見直しを行う仕組みを導入することが考えられます。

 もちろん、すべての罰則や料率を一律に機械的に見直すことが適切とは限りません。それぞれの制度の特性や社会への影響度を考慮し、見直しの頻度や基準を個別に設定する柔軟性も必要です。重要なのは、「定期的に見直す」という原則を確立することです。

 また、改正を行う際には、専門家による検証体制を構築し、客観的なデータに基づいた議論を行うことが不可欠です。感情論や一部の意見に左右されることなく、科学的な根拠に基づいた判断を行うことで、より合理的な制度改正が可能になります。

 さらに、改正案が提示された際には、国民的な議論を活発に行うことも重要です。パブリックコメントの募集やオンラインでの意見交換などを通じて、広く国民の意見を聴取し、多角的な視点から制度の改善を図るべきです。

 もちろん、「機械的・定期的な改正」は、拙速に進めるべきではありません。制度の変更は、私たちの生活や経済活動に大きな影響を与える可能性があります。そのため、改正を行う際には、影響範囲を十分に考慮し、慎重な検討を重ねることが大前提となります。 しかし、「慎重な検討」を理由に、長年にわたって問題が放置されることは避けるべきです。定期的な見直しの仕組みを導入することで、問題が顕在化する前に対応することが可能になり、より健全な社会を実現・維持することができるはずです。

 

変化に対応できる社会へ

 社会は常に変化しています。過去に決めた事に固執するのではなく、変化に合わせて柔軟に制度を見直していくことこそが、私たちの社会をより良くしていくための重要な一歩だと私は信じています。

 設定根拠と変更理由を明確にし、機械的・定期的な改正を行うことで、私たちは時代に取り残された制度の歪みを解消し、より公正で透明性の高い、そして変化に強い社会を築き上げていくことができるはずと考えています。