突然ですが、あなたは「8020(ハチマルニイマル)運動」という言葉を聞いたことがありますか?もしかしたら、何となく知っているけれど、詳しくは…という方もいらっしゃるかもしれません。
人生100年時代と言われる現代において、健康で長く生きることは誰もが願うことでしょう。その「健康」を支える土台の一つに、実は「歯の健康」が深く関わっているのです。今回は、そんな大切な歯の健康を守るための合言葉、「8020運動」について、今さらながらですが、じっくりとご紹介したいと思います。
8020運動とは?シンプルだけど奥深いメッセージ
「8020運動」とは、厚生労働省と日本歯科医師会がタッグを組んで推進している、国民の歯の健康を守るための長期的な取り組みです。そのスローガンは実にシンプル。「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」 たったこれだけのメッセージですが、この数字には深い意味が込められています。
- 80(ハチマル): これは、人生の大きな節目である「80歳」という年齢を表しています。
- 20(ニイマル): これは、「20本以上の自分の歯」という目標の数を示しています。
そしてなぜ80歳で20本という目標値なのでしょうか?それは、20本以上の歯があれば、ほとんどの食べ物をしっかりと噛み砕いて、美味しく食べることができると考えられているからです。自分の歯でしっかりと噛むことは、単に食事を楽しむだけでなく、全身の健康維持にも繋がる非常に重要な機能なのです。
なぜ今、「8020」が大切なのか?
私たちは、毎日食事をすることで生きています。そして、その食事の最初のステップである「噛む」という行為を担っているのが歯です。もし歯が健康でなければ、硬いものが噛めなくなったり、食べ物を細かくすることができず、消化不良を起こしやすくなったりします。
高齢になり、食事が十分に摂れなくなると、低栄養状態に陥り、免疫力の低下や体力低下を招きやすくなります。また、噛むことは脳の活性化にも繋がっていると言われており、認知症のリスク軽減にも関与する可能性が示唆されています。
さらに、歯を失うことは、見た目の印象だけでなく、発音と発声にも影響を与え、人とのコミュニケーションを億劫にしてしまうこともあります。いつまでも自分の歯で笑顔で会話を楽しむことは、精神的な健康にも繋がる大切な要素なのです。
人生100年時代。ただ長生きするだけでなく、Quality of Life(生活の質)を高めるためには、生涯にわたって自分の歯で美味しく食事をし、笑顔で過ごせること、つまり「8020」を達成することが重要な鍵となるのです。
日本人の歯の現状は?ちょっと気になるデータ
では、現在の日本人の80歳の平均残存歯数はどのくらいなのでしょうか?残念ながら、多くの調査報告によると15本前後ということで、目標である20本にはまだ届いていないのが現状です。(日本人の歯の総数は、親知らずを除くと28本が一般的。) しかし、8020運動が始まった頃に比べると、その数は着実に増加・改善しています。これは、国民の歯の健康に対する意識が高まっていることの表れと言えるでしょう。
しかし、油断は禁物です。欧米諸国と比較すると、日本人の歯並びに対する意識や、予防歯科への取り組みには、まだ改善の余地があるという指摘もあります。平均寿命が長い日本ですが、健康寿命とのギャップを埋めるためには、歯の健康にもっと目を向ける必要があるのではないでしょうか。
8020を達成するために、私たちができること
では、私たちが80歳で20本の歯を残すために、今からできることは何でしょうか?それは、日々の小さな積み重ねです。 これらの対策は、決して難しいことではありません。それでも毎日の習慣に少しずつ取り入れることで、将来の歯の健康を大きく左右する可能性があります。
- 毎日の丁寧な歯磨き: これは基本中の基本です。歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを使い、歯と歯の間、歯周ポケットの汚れを丁寧に落としましょう。フッ素入りの歯磨き粉を使うのも効果的です。
- 歯科医院での定期的な健診とクリーニング: 虫歯や歯周病は、初期には自覚症状がないことが多いものです。定期的に歯科医院を受診し、歯石やバイオフィルム(細菌の塊)を専門的に除去するクリーニングを受けることで、早期発見・早期治療に繋がり、進行を食い止めることができます。
- バランスの取れた食生活: 甘いものや炭水化物の摂りすぎは虫歯の原因になります。栄養バランスの取れた食事を心がけ、よく噛んで食べることで、唾液の分泌を促し、歯の再石灰化を助けます。
- フッ素の活用: フッ素は歯質を強化し、虫歯予防に効果的な成分です。歯磨き粉だけでなく、歯科医院でのフッ素塗布やフッ素洗口液の利用も検討してみましょう。
ちょっと待って!歯並びや口臭も大切なんです
ここで、少し話は逸れますが、歯の健康を考える上で、歯並びや口臭も非常に重要な要素であることを忘れてはいけません。
歯並びが悪いと、歯磨きがしにくく、虫歯や歯周病のリスクを高めます。また、噛み合わせの悪さは、顎関節症を引き起こしたり、全身のバランスに影響を与えたりする可能性も指摘されています。
そして、口臭は、周囲の人に不快感を与えるだけでなく、歯周病やその他の口腔内の問題のサインである可能性もあります。
「日本人は歯並びへの意識が低い」という声もありますが、美しい歯並びは見た目の印象を良くするだけでなく、機能的な面からも重要です。また、口臭予防は、社会生活を送る上でのエチケットであると同時に、自身の健康状態を知るためのバロメーターにもなります。
もし、ご自身の歯並びや口臭に気になる点があれば、遠慮なく歯科医師に相談してみてください。適切なアドバイスや治療を受けることで、より快適な生活を送ることができるはずです。
8020運動は、未来への инвестиция
8020運動は、単に「歯を20本残しましょう」という目標を掲げているだけでなく、私たちが生涯にわたって健康で豊かな生活を送るための具体的で分かりやすい手がかりなのです。今、私たちが何気なく行っている歯磨きや食生活の習慣が、未来の自分の笑顔と健康を支えていると言っても過言ではありません。
人生100年時代。 健康で充実したセカンドライフを送るために、今日から「8020」を意識した生活を始めてみませんか?