以前、そう30年位前までは日本人は塩分の過剰摂取によって高血圧に伴う疾患や胃ガンが死亡原因の1位だったと記憶していますが、このことが常識となり、意識的に塩分の過剰摂取に取り組まれるようになったことで目に見えて改善されています。(2024年9月の厚生労働省の発表ではガンの中で胃ガンは4位)もちろん今後も改善に向けて継続した理解や対策が必要ですが、ひとつの社会的成功と言えます。
しかし個人的に以前から同様に改善を期待していた、「近視」については何ら改善の気配を感じないのです。医学は進んでいないのでしょうか?それとも直接の死亡原因になっていなので、軽視されているのでしょうか?あるいはメガネやコンタクトレンズの業界から政治圧力でもあるのでしょうか?
メガネやコンタクトレンズ無しに過ごせるのであれば、スポーツにはより取り組み易く、装着したまま寝てしまって不具合に遭う不安は無く、熱い食事や入浴のときに気にする不便も無くなるわけです。少なくともこれからの子供に、こうした不便を低減・削減させてあげられるのであればそうしたいと願います。
そこで今回のテーマは、現代日本社会における大きな課題の一つ、「近視」についてです。特に、日本は世界的に見ても近視の割合が高いと言われています。今回は、その現状を踏まえ、未来の世代の「見える」を守るための総合的な政策について考えていきたいと思います。
日本における近視の現状と課題
世界的にみて日本人の近視の割合は決して低くありません。遺伝的な要因も指摘されていますが、私たちの生活環境、特に幼少期からの学習習慣やデジタルデバイスの普及が、その進行に深く関わっていると考えられています。近視は、単に「目が悪くなる」というだけでなく、将来的に様々な目の病気(緑内障、網膜剥離、黄斑変性など)のリスクを高める可能性も指摘されており、社会全体で取り組むべき重要な健康問題と考えています。
近視の予防と進行抑制
では、現時点で子供たちのために私たちにできることは何でしょうか?科学的に効果が認められている予防と進行抑制のための対策を改めて確認しましょう。
1. 環境要因へのアプローチ
- 屋外活動の推奨: 日光を浴びる時間が、近視の進行を抑制する可能性があるという研究結果があります。1日に2時間程度の屋外活動を目安に、積極的に外で過ごす時間を確保しましょう。
- 近距離作業の制限と休憩: 長時間連続して近くを見る作業は、目の負担を増やし、近視を進行させる可能性があります。読書やデジタルデバイスの使用は30分~1時間を目安に休憩を挟み、遠くを見るように心がけましょう。
- 正しい姿勢と適切な照明: 近距離作業を行う際は、正しい姿勢を保ち、十分な明るさの下で行うことが大切です。
- 十分な睡眠: 目の健康維持のためにも、質の高い睡眠をしっかりと確保しましょう。
2. 医学的なアプローチ
- 低濃度アトロピン点眼: 近年、海外の研究で近視の進行を抑制する効果が報告されている点眼薬です。日本でも臨床試験が進んでおり、一部の眼科で処方されています。副作用として、わずかな眩しさや近くが見えにくくなることがありますが、高濃度のアトロピンに比べると軽度です。
- オルソケラトロジー: 夜間に特殊なハードコンタクトレンズを装用し、角膜の形状を矯正することで、日中は裸眼で良好な視力を得られる治療法です。近視の進行抑制効果も示唆されていますが、適応条件やレンズの管理が必要です。
- 近視進行抑制コンタクトレンズ: 特殊な設計のコンタクトレンズを使用することで、網膜周辺部でのピントのずれを軽減し、眼軸長の伸長を抑える効果が期待されています。
レーシック(視力回復手術)について
近視を矯正する手段として、レーシック(LASIK)という外科手術も広く知られています。レーザーを用いて角膜の形状を調整することで、近視、遠視、乱視を改善するものです。 有効な視力矯正手段の一つですが、外科手術である以上リスクも伴います。検討する際は、眼科医と十分に相談し、メリットとデメリットを理解した上で慎重に判断することが大切です。
メリット:
- 高い視力矯正効果が期待でき、多くの方がメガネやコンタクトレンズの煩わしさから解放されます。
- 手術時間も比較的短く、術後の回復も早い傾向があります。
- 長期的に視力が安定するケースが多いです。
デメリット(リスクと注意点):
- ドライアイ: 一時的に症状が出ることがありますが、まれに長期化することがあります。
- ハロー・グレア現象: 夜間などに光がにじんで見えることがあります。
- ごくまれに、感染症や角膜拡張症などの合併症が報告されています。
- 術前の適応検査が非常に重要であり、全ての方が受けられるわけではありません。
巷に溢れる「視力回復法」の落とし穴
インターネットやYouTubeなどでは、様々な「視力回復法」が紹介されています。眼球運動や立体視、特定のサプリメントなど、手軽に試せそうなものもありますが、これらの多くは科学的な根拠に乏しいのが現実です。
近視の主な原因は、眼球が前後方向に伸びてしまうこと(眼軸長の伸長)です。筋肉の運動や一時的な目のストレッチで、この器質的な変化を改善することは科学的に難しいと考えられています。また、サプリメントについても、既存の近視を改善する明確な証拠はほとんどありません。
これらの情報に安易に飛びつき、時間や費用を無駄にしてしまうだけでなく、場合によっては目に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。信頼できる情報は、眼科医や専門機関のウェブサイトから得るように心がけましょう。
近視対策の重要な視点
今後の日本社会で近視の進行を低減・削減していくためには、以下の点が重要な基本方針になると考えられます。
日本の厚生労働省や医師会といった関係機関が、これらの重要な視点を踏まえ、科学的根拠に基づいた総合的な近視対策に取り組み推進していくことが、未来の世代の「見える」を守るために不可欠です。
しかしやってくれるかなぁ......
- エビデンスに基づいた政策の推進: 近視予防・進行抑制に関する最新の科学的知見に基づき、効果が実証された対策を積極的に導入していく必要があります。
- 多方面からのアプローチ: 教育現場、家庭、地域社会、医療機関、企業など、社会全体で連携し、それぞれの立場から近視対策に取り組むことが重要です。
- 早期発見と早期介入の強化: 学校検診の充実や、異常が見られた場合の早期受診を促す仕組みを構築し、適切な時期からの対策を可能にする必要があります。
- 進行抑制治療への理解と普及: 低濃度アトロピン点眼やオルソケラトロジーなど、科学的根拠のある進行抑制治療について、医師や患者への情報提供を充実させ、適切な医療機関で提供できる体制を整える必要があります。
- 国民への啓発活動の強化: 近視の原因や予防方法に関する正しい知識を、様々な媒体を通じて分かりやすく伝え、国民全体の意識向上を図る必要があります。
- 継続的な研究と技術開発の支援: 近視のメカニズム解明や、より効果的で安全な予防・治療法の開発に向けた研究を支援していくことが重要です。
以 上