AirLand-Battleの日記

思い付きや素朴な疑問、常識の整理など、特段のテーマを決めずに書いております。

思えばゲーム用語も普及したもんだ

 最近は還暦を過ぎた人でも、「豊富な経験がある」「熟練している」という意味で「経験が高い」という表現をするのは珍しくなくなりました。これは明らかに電子ゲーム用語が日常に広まり定着しているということでしょう。

 アーケードの「スペースインベーダー」の発表が1978年、(初代)ファミコンの発売が1983年ですから、もはや日本では生活文化となっており、そのグラフィックも音楽も、そして関連用語もある程度、生活文化のひとつとして常識になってゆくものなのでしょう。

 他に適格な言葉が思い付かないのであれば仕方ありませんが、個人的には文章上で「経験」という表現を使うのにはやや抵抗を感じます。そして公式な文書の上であれば、知らずにゲーム用語を使ってしまうと眉をひそめる人も多いのだろうということは想像できます。

 以下にゲーム由来で普及してきたと思われる用語を挙げてみましたので、ご参考までにご一読ください。

 

  • 経験値: ゲームキャラクターが成長するために得る数値のこと。この表現が広まる以前は、学習や訓練によって得られる「経験」「熟練度」「習熟度」「実績」といった言葉が使われていました。「経験値を積んでレベルアップする」は「経験を積んで腕を上げる」「仕事の豊富な経験が彼の強みだ」のように表現できます。

  • フラグ: ゲームの進行において、特定の条件が満たされたかどうかを示すための情報。以前は、「合図」「兆候」「条件」「きっかけ」といった言葉で、ある事象が発生するための前提条件や、その発生を示すサインを表していました。「フラグが立つ」は「条件が満たされる」「きっかけが生じる」、「フラグ管理を怠ると予期せぬエラーが起こる」は「前提条件の管理を怠ると予期せぬエラーが起こる」と言い換えらるでしょう。 原初はおそらくプログラミングに由来した用語であって、それがゲーム用語として広まったと考えられます。

  • ラスボス: ゲームの最後に登場する最も強力な敵キャラクター、"Last Boss"のこと。以前は、「最後の難関」「首魁(悪事の中心となる人物)」といった言葉で、物語や目標達成の最後の、最も手強い相手を指していました。「ラスボスを倒してゲームクリアだ」は「最終的な敵を倒してゲームクリアだ」、「プロジェクトにおけるラスボスは予算獲得だ」は「プロジェクトにおける最後の難関は予算獲得だ」のように言い直すことができそうです。

  • レベル: ゲームキャラクターの強さや能力の段階を示す指標。ゲーム以外の分野では「段階」「程度」「」「水準」といった言葉で、能力や熟練度の段階を表していました。「レベルが上がる」は「段階が上がる」「程度が増す」、「彼の英語のレベルは高い」は「彼の英語の水準は高い」のように表現できます。

  • 攻略本: ゲームを有利に進めるための情報がまとめられた書籍のこと。以前は、同様の目的を持つ書籍として、「手引書」「解説書」「指南書」「あんちょこ」といった言葉が使われていました。「攻略本を読んでクリアのヒントを得る」は「手引書を読んでクリアのヒントを得る」、「問題解決のための参考書を読む」のように言い換えられます。

  • クリア: ゲームを最後まで終える、というゲーム特有の行為が元になっています。広まる以前は、目標を達成した場合は「達成」「完了」「成功」、問題を解決した場合は「解決」「打開」「収束」といった言葉が使われていました。「難しいプロジェクトをクリアした」は「難しいプロジェクトを達成した」、「試験をクリアして一安心だ」は「試験を終えて一安心だ」と言い換えられます。

  • カンスト: ゲームの能力値などが上限に達するという特殊な状態、"Counter Stop"を表す言葉。能力や熟練度が最高レベルに達した状態を指す場合、「最高レベル」「頂点「極致」といった言葉が使われていました。「彼のプログラミングスキルはカンストしていると言えるだろう」は「彼のプログラミングスキルは最高レベルに達していると言えるだろう」、「長年の経験で、その道の知識はカンストしている」は「長年の経験で、その道の知識は極めて深い」のように表現できます。

  • セーブ/ロード: ゲームの進行状況を保存・読み込むという操作に由来します。ゲーム以外でもパソコン作業でも使用される用語であり、その普及もこの言葉の定着を進めたと考えられます。以前はデータを保存する場合は日本語で、「保存」「記録」、過去の状態を呼び起こす場合は「呼び出し」「参照」といった言葉が使われていました。「念のためデータをセーブしておこう」は「念のためデータを保存しておこう」、「以前の設計図をロードして確認する」は「以前の設計図を参照して確認する」となります。

  • リセット: ゲームの状態を初期状態に戻す操作から来ています。以前は、状況を仕切り直す場合は「仕切り直し」「再始動」「立て直し」、白紙に戻す場合は「白紙に戻す」「一からやり直す」といった表現が用いられていました。「会議の流れをリセットして、もう一度話し合おう」は「会議の流れを仕切り直して、もう一度話し合おう」、「気分をリセットして新しいことに挑戦する」は「気分を切り替えて新しいことに挑戦する」と言い換えられます。

  • ステータス: ゲームキャラクターの能力値や状態を示す言葉。以前は、人や物事の状態や状況を示す場合、「状態」「状況」「進捗」といった言葉が使われていました。「現在のプロジェクトのステータスを確認する」は「現在のプロジェクトの進捗状況を確認する」、「彼の健康ステータスは良好だ」は「彼の健康状態は良好だ」となります。

  • イベント: ゲーム内で発生する特定の出来事を指す言葉。以前から、特別な出来事や催し物を指す言葉として「出来事」「催し」「行事」「イベント」自体が使われていましたが、ゲーム由来の「イベント」は、より広範な状況や出来事を指すニュアンスを持つようになったと言えるかもしれません。「週末には地域のイベントに参加する」「人生における大きなイベントを振り返る」は、以前から同様に使われていた表現です。

  • インフレ: ゲーム内でアイテムや通貨の価値が異常に高くなる現象を経済用語から借用し、さらに比喩的に用いるようになりました。ものが溢れかえっている状態を指す場合は「過多」「飽和」、情報過多の状態を指す場合は「情報過多」「情報洪水」といった言葉が使われていました。「情報がインフレしていて、何が重要かわからない」は「情報が溢れかえっていて、何が重要かわからない」、「最近、物がインフレ気味で収納に困る」は「最近、物が増えすぎて収納に困る」のように表現できます。

  • チート: ゲームのルールを不正に操作することを指す言葉。以前は、ずる賢い手段や裏技といった意味合いで、「不正な手段」「ずる」「ごまかし」「抜け道」といった言葉が使われていました。「あの手この手でチートのような方法を編み出す」は「あの手この手でずる賢い方法を編み出す」、「ずる賢いチートのようなやり方で成功した」は「不正な手段を使って成功した」のように言い換えられます。

  • ナーフ/バフ: ゲームのキャラクターやアイテムの能力を弱体化・強化することを指す言葉。以前は、性能や能力を弱体化する場合は「弱体化」「下方修正」「性能低下」、強化する場合は「強化」「上方修正」「性能向上」といった言葉が使われていました。「新しい規制で業界全体がナーフされた」は「新しい規制で業界全体が弱体化した」、「今回のアップデートでサービスの利便性がバフされた」は「今回のアップデートでサービスの利便性が向上した」のように表現できます。

 

以 上