AirLand-Battleの日記

思い付きや素朴な疑問、常識の整理など、特段のテーマを決めずに書いております。

テレビ報道の素人コメントでは満足できない

 テレビのニュース番組や情報バラエティ番組を見ていると、事件や社会問題に対して、スタジオにいる芸能人や街頭インタビューを受けた一般の方の感想が大きく取り上げられる一方で、専門家の意見は意外と短くまとめられてしまっていると感じることはありませんか? 他には「コメンテーター」と称する人が知っている範囲の関連知識で理解を深めるために解説を加えてくれますが、あまり決定的なコメントではないという印象です。

 「なんだか、一般の人の『へぇ〜』とか『かわいそう』みたいな感想ばかりで、もっと深く掘り下げた専門家の話を聞きたいのに!」 そう感じている方もいるかもしれません。ここでは、なぜテレビ報道で一般の人のコメントが多く取り上げられるのか、その現状の問題点、そして私たちがより質の高い情報を得るためにはどうすれば良いのかを、じっくりと紐解いていきたいと思います。

 

なぜテレビは一般人のコメントを重視するのか?

 テレビ番組を見ていると、事件現場近くの人や、そのニュースに関心を持った一般の人のインタビューが頻繁に流れますよね。もちろん、そうした生の声は、事件のリアルな側面や、社会の雰囲気を伝える上で一定の役割を果たしているのは理解できます。しかし、なぜ専門家の分析よりも多くの時間が割かれることがあるのでしょうか?その背景としては、いかのようなそれなりに妥当な事情が挙げられます。

 

1. 共感と親近感の醸成:  テレビは、不特定多数の視聴者に見てもらう必要があります。そのため、視聴者が「自分と同じように感じている人がいる」「この問題は他人事ではないんだ」と共感しやすい一般の人のコメントは、番組への感情的な繋がりを生み出し、視聴率向上に繋がりやすいと考えられます。

2. 話題性とニュースバリュー:  衝撃的な事件や社会現象に対して、一般の人が抱く素朴な疑問や率直な感想は、SNSなどで拡散されやすく、ニュースとしての話題性を高める可能性があります。「みんなが気になっていること」を報じる姿勢は、視聴者の関心を引きつけやすいのです。

3. 手軽さとコスト:  一般の人のコメントを収録するのは、専門家への取材と比較して、時間や費用を抑えられる場合があります。特に速報性が求められるニュース報道においては、効率的な取材手段として一般の人の声が活用されやすい側面があります。

4. 「分かりやすさ」の追求:  複雑な事件や社会問題を、専門用語を避け、誰にでも理解しやすい言葉で語る一般の人のコメントは、視聴者にとって親しみやすく、内容を理解した気にさせやすいという側面があります。

 

専門家の分析・意見が必要な理由

 しかし、一般の人の感想ばかりが大きく取り上げられ、専門家の意見が十分に伝えられない状況は、報道の社会性という観点から見ると、いくつかの問題点を孕んでいます。

 

1. 事実の軽視と感情論の蔓延:  個人の主観的な感情や印象が過度に強調されることで、事件の客観的な事実や背景、根本的な原因が見えにくくなる可能性があります。「感情論」は共感を呼びやすい反面、本質的な理解を妨げることも少なくありません。

2. 議論の質の低下:  深い知識や専門的な分析に基づかない意見が中心になると、建設的で質の高い議論が生まれにくくなります。問題解決に向けた具体的な提案や、多角的な視点からの考察が不足し、表面的な議論で終わってしまう可能性があります。

3. 情報リテラシーの低下:  視聴者が、感情的な反応と客観的な事実とを区別する能力を養う機会が失われる可能性があります。「みんなが言っているから」「テレビで言っていたから」という安易な判断に繋がりやすく、情報の本質を見抜く力が育ちにくくなります。

 

なぜ専門家の声はもっと届かないのか?

 では、なぜテレビ報道は、もっと専門家の意見を積極的に取り上げないのでしょうか?その背景には、報道機関側の事情や、専門家ならではの難しさがあるようです。

 

1. 専門家の偏向性への懸念:  専門家も人間であり、それぞれの立場や研究分野、信条によって意見が異なることがあります。報道機関は、どの専門家の意見が最も適切なのか判断に迷ったり、複数の意見を紹介することで視聴者の混乱を招くことを懸念したりする場合があります。また、特定の意見を持つ専門家ばかりを取り上げることで、報道機関自身の偏向性を疑われる可能性も考慮しているかもしれません。

2. 的確な専門家の選定の難しさ:  現代社会は複雑化し、専門分野も細分化しています。事件や社会問題の内容に応じて、本当に的確な専門家を見つけ出すのは容易ではありません。また、優れた知識を持つ専門家が、必ずしもメディア露出に慣れているとは限らず、分かりやすく解説する能力に長けているとは限りません。

3. 専門家への対価と時間的コスト:  専門家に分析や解説を依頼するには、謝金が発生する場合があります。複数の専門家に意見を求めたり、長期間にわたる取材が必要になったりすると、報道機関にとって大きな経済的負担となります。また、専門家との連絡調整や取材、意見の編集には時間もかかり、速報性が求められるニュース報道においては、これらのコストがネックとなることがあります。

4. 番組の「分かりやすさ」と尺の制約:  テレビ番組は、多くの視聴者に理解してもらう必要があるため、専門的な知識や複雑な分析は、敬遠されることがあります。「難しそう」「退屈そう」という印象を与えないよう、より平易な言葉で、短い時間で伝えられる情報が優先されがちです。

5. 政治的・商業的な配慮:  報道機関は、特定の政治的立場を支持したり、スポンサーの意向を考慮したりする場合があります。そのため、特定の専門家の意見を意図的に採用しなかったり、採用しても一部を編集したりすることがあります。

 

テレビに期待できないと感じたら:より質の高い情報を求めて

 もしあなたが、テレビ報道のコメントに満足できず、「もっと深く、多角的な情報を得たい」と感じているなら、テレビ以外のメディアにも目を向けてみることが大切です。一つのメディアに依存するのではなく、様々な情報源を活用し、批判的な視点を持って情報を受け止めることを考えましょう。

 そもそも昨今の「テレビ離れ」の風潮は、既にテレビ報道の質への不満が広がっていることも一因なのかもしれません。

 以下に、より質の高い報道やバランスの取れた情報収集のためのいくつかのアドバイスをご紹介します。多角的な視点を持つことを意識して、複数の情報源から同じニュースに関する情報を集め、比較検討することで、より客観的な理解に近づけます。さらには「なぜそう報じられているのか?」という視点から個々の報道機関の意図や背景を意識することで、情報の偏りを見抜くことができるかもしれません。

 

1. 信頼できるオンラインニュースサイトを活用する:

  • 国内外の主要新聞社のウェブサイト:  大手新聞社は、速報性だけでなく、深掘りした分析記事や専門家による解説、多角的な視点を提供しています。
  • 専門性の高いニュースサイト:  特定の分野に特化したニュースサイトは、その分野の専門家による質の高い分析や解説が期待できます。
  • ニュースアグリゲーションサービス:  複数のメディアの記事を効率的にチェックできますが、情報の偏りには注意が必要です。

2. 独立系メディアや調査報道機関に注目する:

  • オンラインジャーナリズム:  既存のメディアの枠にとらわれず、独自の視点で深く取材・報道を行うメディアは、新たな視点や隠された事実を提供してくれる可能性があります。
  • 調査報道機関:  特定のテーマを時間をかけて徹底的に調査する機関のレポートは、事件の真相や背景を深く理解する上で貴重な情報源となります。

3. ソーシャルメディアは情報源の一つとして捉える(ただし慎重に):

  • TwitterなどのSNS:  事件の速報性や、一般の人のリアルタイムな反応を知るには役立ちますが、情報の信頼性には十分な注意が必要です。専門家が自身の意見を発信している場合もありますが、情報の真偽を見極める力が必要です。

4. 専門家が直接発信する情報に触れる:

  • 専門家のブログやSNS:  研究者や専門家が、自身の専門知識に基づいて意見や分析を発信していることがあります。
  • 学術論文や研究レポート:  より専門的な知識を得たい場合は、学術論文データベースや研究機関のウェブサイトなどを参照するのも有効です(ただし、専門知識が必要となる場合があります)。
  • ポッドキャストや動画プラットフォーム:  専門家が自身の専門分野について分かりやすく解説しているチャンネルもあります。

 

以上