「なんだか最近、疲れやすいな」「肌の調子がイマイチ…」
日々の生活の中で、私たちは様々な体の変化を感じています。でも、その小さなサインを見過ごしてしまうことも少なくありません。もし、毎朝鏡を見るほんの数分で、自分の体の状態を少しでもチェックできるとしたらどうでしょうか?
今回は、医師の診察で行われる「視診」の考え方をベースに、私たち素人でも手軽にできる「自己視診」の方法をご紹介します。これは、病気の早期発見や、体調の変化にいち早く気づくための第一歩にもなるかもしれません。毎日の習慣にすることで、あなたの健康管理に少しは役立つものと思います。
早期発見と安心のために
私たちの体は、様々なサインを発しています。顔色が悪くなったり、目や唇の色に小さな変化が現れたり、舌の状態が変わったり…。これらの変化は、体からの大切なメッセージかもしれません。
自己視診を習慣にすることで、普段の自分の状態を把握できるようになり、小さな変化にも気づきやすくなります。早期に異変を発見できれば、医療機関への早期受診につながり、結果として早期治療を開始できる可能性が高まります。
もちろん、自己視診だけで全ての病気を発見できるわけではありません。しかし、「いつもと違う」という感覚を持つことは、健康管理において非常に重要なことです。自分の体を注意深く観察する習慣は、安心感にもつながります。
自己視診の基本的な流れ~洗顔ついでに!~
自己視診は、特別な道具は必要ありません。毎朝、洗面台の鏡の前で行うのがおすすめです。以下の点に注意してチェックしてみましょう。
注意点1:明るい場所で鏡の前に立つ
自然光が入る場所や、明るい照明の下で行うことで、顔色や皮膚の状態をより正確に観察できます。
注意点2:正面から全身を観察
まずは、鏡に映る自分の全身を正面から見てみましょう。姿勢、肌の色、全体の印象などをざっくりと把握します。
注意点3:各部位を丁寧にチェック
以下のチェックポイントを参考に、各部位を順番に丁寧に観察していきます。
部位ごとのチェックポイント
1.顔色と皮膚の状態
- 顔色:
- 普段と比べて、青白い、黄色っぽい、赤ら顔になっていないか確認しましょう。
- 顔色全体だけでなく、目の周りや唇の色などもチェックします。
- 皮膚:
- 顔、首筋、手の甲など、見える範囲で発疹、湿疹、赤み、腫れ、かゆみがないか確認しましょう。
- ほくろやシミの数、大きさ、形、色の急な変化がないか注意深く観察します。
- 小さな傷や出血、乾燥なども見逃さないようにしましょう。
2.目の状態
- 白目:
- 白目が黄色っぽくなっていないか(黄疸のサインの可能性があります)。
- 充血していないか、血管が目立っていないか。
- 黒い点やシミのようなものがないか。
- まぶた:
- 腫れやただれ、かゆみがないか。
- まぶたの色が暗くなっていないか。
- 目の周りのクマが目立っていないか。
- 瞳孔:
- 左右の大きさに違いがないか(難しい場合は、光の当たり具合に注意して確認します)。
3.口の中の状態
- 舌:
- 舌の色(淡いピンク色が正常。赤みが強い、紫色っぽい、白っぽいなど変化はないか)。
- 舌の形(腫れぼったい、痩せている、歯形がついているなど変化はないか)。
- 舌の表面の状態(荒れていないか、できものがないか)。
- 舌苔(舌の表面の付着物)の色や厚さ(薄く白いのが正常。厚い、黄色い、黒いなど変化はないか)。
- 歯茎:
- 歯茎の色(赤みや腫れはないか)。
- 出血はないか。
- 口内粘膜:
- 白い斑点やただれ、口内炎のようなものがないか。
4.首の状態
- 腫れやしこり:
- 首筋や鎖骨のあたりを軽く触って、腫れやしこりがないか確認しましょう。
- 左右差がないかも意識してみましょう。
5.手の状態
- 爪:
- 爪の色(白い、黒い筋があるなど変化はないか)。
- 爪の形(反り返っている、へこんでいる、異常に厚くなっているなど変化はないか)。
- 爪の表面のツヤや凹凸。
- 皮膚:
- 指の間や手のひらに発疹や水疱がないか。
- 皮膚の乾燥やひび割れがないか。
6.その他の気になる部位
もし、以前から気になっている部位があれば、その部分も意識して観察しましょう。例えば、足のむくみ、皮膚のかゆみ、関節の腫れなど、小さなことでも記録しておくと良いでしょう。
東洋医学的な視点~より深く自分の体を知る~
東洋医学では、顔色や舌の状態から、さらに深い体の状態を読み解きます。自己視診に取り入れることで、より多角的に自分の体を理解する助けになります。
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顔色(五色):
- 青っぽい:なんとなく元気がない、冷えを感じるなど。
- 赤い:ほてりやすい、イライラしやすいなど。
- 黄色っぽい:胃腸の調子が優れない、むくみやすいなど。
- 白い:疲れやすい、顔色がさえないなど。
- 黒っぽい(暗い):長年の不調、冷えや血行不良など。
- ※これらの色は、あくまで目安です。
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舌の状態(舌診):
- 舌の色が淡い:元気がない、栄養不足の傾向。
- 舌の色が赤い:熱っぽい、のどが渇きやすい。
- 舌の色が紫色っぽい:血行が滞っている可能性。
- 舌苔が厚い:胃腸の調子が悪い、消化不良気味。
- 舌苔がない:体の潤いが不足している可能性。
自己視診を続けるための3つのコツ
- 毎日のルーティンに組み込む: 歯磨きや洗顔と同じように、毎朝の習慣にしましょう。
- 変化に気づいたらメモをする: いつから、どのような変化があったかを簡単に記録しておくと、医療機関の受診の際に役立ちます。
- 過度に心配しすぎない: 小さな変化に一喜一憂せず、気になることがあれば専門家に相談するようにしましょう。
自分の体と向き合う大切なひととき
自己視診は、自分の体と向き合い、小さな変化に気づくためのアイデアのひとつです。毎日続けることで、自分の नॉर्मल な状態を知り、異変にいち早く気づくことができるようになるはずです。
最近では2024年発売のアップル社のアップルウォッチが、心拍数や心電図を計測できるようになったということが話題になりました。こうした最新機器だけでなく体組成計(体重計)や血圧計のほか、定期健康診断なども大切です。日頃から自身の健康状態をより手軽に把握する方法のひとつが、今回紹介した自己視診になると思います。
ただし、自己視診はあくまでもセルフチェックであり、病気の診断をするものではありません。もし、気になる症状が現れた場合は、自己判断せずに必ず医療機関を受診してください。
この習慣が、皆様の健康維持と早期発見・早期治療の一助となることを心から願っています。今日から鏡を見る時間に少しだけ健康をより意識し、自分の体と対話する大切な時間に変えていきましょう。
【注意】
日本の法律では、国家資格を持たない者が医師として診察や治療を行うことは原則として禁止されています。その根拠となる主な法律と条文は以下の通りです。
医師法 第17条(医業の独占)
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医師でなければ、医業をなしてはならない。
この条文によって、医師の資格を持たない者が「医業」を行うことを禁止としています。「医業」とは、判例や厚生労働省の解釈によれば、「当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を、反復継続する意思をもって行うこと」とされています。