以前に「今さらながら紹介 人生100年時代を笑顔で!「8020運動」って何?」という歯の健康については記事を書き、前回は「知っておきたい耳の健康」を記事を投稿しましたので、今回はいわば第3弾になるでしょうか。また「近視に対する総合政策を」という記事では、これだけ日本人には近視が多いのだから、社会レベルで具体的に改善に取り組んで欲しいという主旨に文章も投稿しました。
さて、日本人の多くにとって比較的よく知られている「目の健康」について、特に高齢化に伴う眼の異常、その影響、早期発見の方法、そして日常生活での対策などについて簡単に解説していきたいと思います。
目、それは外界の色彩や形、そして現代では重要な文字情報や映像情報などを認知している感覚器官です。視覚は、脳に至る五感(視覚/聴覚/嗅覚/触覚/味覚)の感覚情報中の約80%を占めるとされており、生活の上で極めて重要であるとともに、実は非常にデリケートな器官です。若いうちは「近視」くらいしか気にしないという人もいるかもしれません。しかし、目は年齢とともに様々な変化を経験し、知らず知らずのうちに不調や病気が進行していることも少なくありません。
今回は目の健康を守るために、近視以外の目の不調や病気、特に老化に伴う目の変化について、その予防法や症状緩和策、さらには日本の失明原因に関する衝撃の事実などをまとめてお届けしますので、ご参考になれば幸いです。
比較的よく知られている目の不調や病気
まず、年齢に関わらず誰もが経験しうる目の不調や病気から見ていきましょう。これらは日々の生活習慣が大きく関わっていることも多いんです。
1. ドライアイ
まるで砂漠のように目が乾く、ゴロゴロする、しょぼしょぼする、かすむ…そんな経験ありませんか?これらはすべてドライアイのサインかもしれません。パソコンやスマートフォンの長時間使用、エアコンによる乾燥、コンタクトレンズの使いすぎ、瞬きの減少などが主な原因です。
【対策】
- 意識的な瞬き: 1時間に10回程度、意識して目を閉じたり開いたりしましょう。
- 適度な休憩: デジタルデバイスを使う際は、1時間ごとに10~15分程度目を休ませ、遠くを見るようにしましょう。
- 加湿: 部屋の湿度を適切に保ちましょう。
- 目を温める: 蒸しタオルなどで目を温めるのも効果的です。
- 適切な目薬: 市販のものでも良いですが、症状が続く場合は眼科で相談し、適切な目薬を処方してもらいましょう。
2. 眼精疲労
目の疲れだけでなく、頭痛や肩こりまで引き起こすのが眼精疲労です。度数の合わないメガネやコンタクトレンズ、ストレス、睡眠不足なども大きな要因となります。
【対策】
- 作業環境の見直し: 画面との距離を適切に保ち、照明も明るすぎず暗すぎないように調整しましょう。
- 目の体操: 定期的に遠くを見たり、目を上下左右に動かしたりする体操を取り入れましょう。
- 十分な睡眠と栄養: 体全体の健康が目の健康にも繋がります。
3. 結膜炎
目やに、充血、かゆみ、涙が止まらない…これらの症状が出たら結膜炎の可能性が高いです。アレルギー性、細菌性、ウイルス性など様々な種類があり、特にウイルス性の「はやり目」は感染力が強いので注意が必要です。
【対策】
- 眼科受診: まずは眼科を受診し、適切な診断と治療を受けましょう。
- 清潔保持: 目をこすらない、タオルなどを共有しないなど、感染拡大を防ぐ対策が重要です。
そのほか、老化以外の目の病気
「まだ若いから大丈夫」なんて思っていませんか?実は若い世代でも注意すべき目の病気は上記の他にもいくつかあります。
- 網膜剥離: 目の奥にある網膜が剥がれてしまう病気です。目の前にゴミや虫のようなものが飛んで見える飛蚊症や、光が当たっていないのにチカチカ見える光視症が初期症状として現れることがあります。特に強度の近視の人はリスクが高いとされています。放置すると失明に至る可能性もあるため、これらの症状に気づいたらすぐに眼科を受診することが重要です。
- ぶどう膜炎: 目の内部にあるぶどう膜に炎症が起きる病気です。目の充血、痛み、まぶしさ、かすみ、飛蚊症などが症状として現れます。自己免疫疾患や感染症など原因は様々です。
- コンタクトレンズによるトラブル: 不適切な使用(装用時間を守らない、レンズケア不足、つけたままで寝るなど)は、角膜に傷がついたり(角膜上皮障害)、感染症を引き起こしたり(角膜感染症)、重症化すると失明に至ることもあります。コンタクトレンズは、眼科医の指導のもとで適切に選び、正しい使用方法とケアを徹底することが不可欠です。
老化に伴う目の不調・病気と向き合う
さて、ここからは「老化」という時の流れとともに、私たちの目に起こりうる変化、そしてそれによって引き起こされる不調や病気に焦点を当てていきましょう。
1. 老眼(老視)
40代半ば頃から、近くの文字がぼやけて見えたり、手元での作業で目が疲れやすくなったり…。これは老眼の始まりです。目のレンズである「水晶体」が硬くなり、ピント調節能力が衰えるために起こる、誰にでも訪れる自然な加齢現象です。
日本人に多い近視は遠くが見えにくくなる不調ですから、この上さらに近くまで見えにくくなるという困った不調になります。
【年代別の発生状況】
- 40代半ばから: 多くの人が自覚し始めます。
- 日本の人口の半数以上: 45歳以上が対象の場合、約56%が老眼という報告があります。
- 80歳以上: ほぼ100%の人が老眼の症状を抱えています。
【予防法(進行を緩やかにする)・症状緩和策】
- 適切な老眼鏡や遠近両用眼鏡: 目の状態やライフスタイルに合わせて選びましょう。
- 目のストレッチ: 意識的に遠くを見たり、近くを見たりしてピント調節筋を動かしましょう。
- 目の休息と適切な照明: 暗い場所での読書や、無理な作業は避けましょう。
- 栄養: 抗酸化作用のあるビタミンA, C, E、ルテインなどを積極的に摂りましょう。
2. 白内障
「最近、視界全体がスリガラスのようにかすむ」「物が二重に見える」「まぶしくて見にくい」と感じたら、それは白内障のサインかもしれません。加齢によって目のレンズである水晶体が白く濁ってしまう病気で、80歳を過ぎるとほぼ全員が発症すると言われています。
【年代別の発生確率】
- 50代: 40~50%
- 60代: 70~80%
- 70代: 80~90%
- 80歳以上: ほぼ100%
【予防法(発症を遅らせる)・症状緩和策】
- 紫外線対策: UVカット機能付きのサングラスや帽子で目を紫外線から守りましょう。これは非常に重要です。
- 禁煙: 喫煙は白内障のリスクを高めます。
- 抗酸化作用のある食品: ビタミンC, E, ルテインなどを積極的に摂取しましょう。
- 糖尿病の管理: 糖尿病は白内障を早める原因となるため、血糖コントロールが重要です。
- 根本治療は手術: 濁りを完全に治す薬はなく、症状が進行して日常生活に支障をきたす場合は、手術で濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズを挿入します。
3. 緑内障
緑内障は、眼圧の上昇などにより視神経が障害され、視野が徐々に欠けていく病気です。一度障害された視神経は元に戻らないため、早期発見と進行抑制が極めて重要です。そして、これが今回一番お伝えしたいことかもしれません…
【年代別の有病率(40歳以上)】
- 40歳代: 約2.2%
- 50歳代: 約2.9%
- 60歳代: 約6.3%
- 70歳代: 約10.5%
- 80歳代: 約11.4%
- 全体(40歳以上): 約5.0%(約20人に1人)
【最も衝撃の事実】
- 緑内障は、日本における失明原因の第1位となっています。
- 緑内障と診断された人の約6割は、診断時に「何も問題を感じていなかった」と回答しています。つまり、自覚症状がないまま静かに進行し、気づいた時にはかなり病気が進んでいるケースが多いということです。
【予防法(早期発見とリスク軽減)・症状緩和策(進行抑制)】
- 定期的な眼科検診: 40歳を過ぎたら、自覚症状がなくても年に一度は眼科検診を受けましょう。これが最も重要な予防策です。
- 眼圧を上げない生活習慣: 適度な運動、ストレス軽減、首元を締め付けないなど。
- 薬物療法(点眼薬): 眼圧を下げる点眼薬を、医師の指示通り毎日欠かさず使うことが大切です。
4. 加齢黄斑変性
加齢に伴い、視力に最も重要な網膜の中心部(黄斑)が見えにくくなる病気が加齢黄斑変性です。視野の中心がぼやけたり、ゆがんで見えたり、暗く見えたりする症状が現れます。
【有病率】
- 50歳以上: 全体の約1%にみられます。
- 日本における失明原因の第4位です。
【予防法(発症リスクを下げる)・症状緩和策(進行抑制)】
- 禁煙: 喫煙は加齢黄斑変性の最大のリスク因子です。
- 紫外線対策: サングラスなどで目を保護しましょう。
- 抗酸化作用のある栄養素: ルテイン、ゼアキサンチン、ビタミンC, E, 亜鉛、DHA, EPAなどを積極的に摂取しましょう。これらは緑黄色野菜や青魚に豊富です。
- 早期発見: 片目ずつ見る「アムスラーチャート」などでセルフチェックを行い、異常を感じたらすぐに眼科へ。
- 薬物療法(抗VEGF療法): 異常な血管の成長を抑える薬剤を目に注射する治療法が一般的です。
衝撃の事実!日本における失明原因 上位10件
これまでにも触れてきましたが、改めて日本の失明原因の現状を見てみましょう。
【日本における失明原因 上位10件(身体障害者手帳交付の原因疾患より)】
- 緑内障: 約40.7%
- 網膜色素変性症: 約13.0%
- 糖尿病網膜症: 約10.2%
- 加齢黄斑変性: 約9.3%
- (以下、ぶどう膜炎、高度近視による合併症、網膜剥離、脳卒中による視神経障害、角膜疾患などが続きますが、具体的な割合は調査により変動します。)
このリストを見て、改めて緑内障が突出して多いことに驚かれたのではないでしょうか。そして、この上位の病気の多くが、早期発見と適切な治療によって進行を遅らせたり、失明を回避したりできる可能性があるということも忘れないでおきましょう。
目の健康を守るために、今日からできること
ここまで様々な目の不調や病気についてお話ししてきましたが、最後に、あなたの目の健康を長く保つための「黄金ルール」をお伝えします。
- 定期的な眼科検診: 40歳を過ぎたら、自覚症状がなくても年に一度は眼科を受診しましょう。特に緑内障は自覚症状が少ないため、早期発見が何より重要です。
- 紫外線対策: 季節や天気に関わらず、屋外ではUVカット機能付きのサングラスや帽子を着用しましょう。
- バランスの取れた食事: 緑黄色野菜、魚介類、ナッツ類など、目に良いとされる栄養素(ビタミンA, C, E, ルテイン, ゼアキサンチン, オメガ3脂肪酸など)を積極的に摂りましょう。
- 禁煙: 喫煙は多くの目の病気のリスクを高めます。
- デジタルデバイスとの付き合い方: 長時間の使用を避け、適度な休憩と適切な画面設定を心がけましょう。
- 全身の健康管理: 糖尿病や高血圧などの持病は、目の病気のリスクを高めます。全身の健康管理も目の健康に直結します。
- 目の異常に気づいたらすぐに受診: 「おかしいな」と感じたら、「年だから仕方ない」と自己判断せずに、すぐに眼科を受診しましょう。
目は、私たちが世界と繋がるための大切な窓です。その窓が曇ったり閉ざされたりしないよう、今日からできること、始めてみませんか?