人生を豊かにしたい、あるいは自分を成長させたいと考えたとき、私たちはよく「目標」を立てます。しかし、一口に目標といっても、そのアプローチは多岐にわたります。
今回は、4種類のリスト術――「バケットリスト」「ウィッシュリスト」「ミッション・ステートメント」「コレド」――について、それぞれの特徴と、実際に作成するための具体的な要領を整理しました。 これらを使い分けることで、あなたの人生は「ただ流されるもの」から「自ら描くもの」へと変わるかもしれません。
そもそも私たちは、何のために目標を立てるのでしょうか。それは、限られた「時間」という資源を、最も価値あるものに注ぎ込むためです。しかし、その時々の心の状態や人生のステージによって、必要なリストの形は異なります。 ここでは、それぞれのリストが持つ特長と、今日から実践できる作成の要領を簡潔にまとめてみました。
1. バケットリスト(棺桶リスト):人生の総決算
特徴:死を見つめて「生」を逆算する
映画『最高の人生の見つけ方』(2007年 アメリカ)や『死ぬまでにしたい10のこと』(2002年 スペイン&カナダ)で広く知られるようになったこのリストは、その名の通り「死ぬまでにやりたいこと」を書き出すものです。最大の特徴は、「人生には終わりがある」という冷徹な事実を直視する点にあります。
死を意識することは、決してネガティブなことではありません。むしろ、終わりを意識することで、日々の些細な悩みや「世間体」という霧が晴れ、自分の魂が本当に求めているものが浮かび上がってくるのです。
作成の要領:
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静かな場所で「余命」を仮定する: もし、あと1年で人生が終わるとしたら? あるいは10年だとしたら? と自分に問いかけます。
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悔いをゼロにする視点: 「これをやらずに死んだら、あの世で絶対に後悔する」と思うことを書き出します。
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スケールの制限を外す: お金や能力の限界は一旦無視してください。宇宙旅行でも、会いたい有名人でも、心に浮かぶすべてを許可します。
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「未完了」を「完了」させる: 長年疎遠になっている人への謝罪や、中途半端に投げ出している学びなど、「心のしこり」を解消する項目を入れましょう。
2. ウィッシュリスト(やりたいことリスト):日常に高揚感を
特徴:自分の「快・不快」のセンサーを取り戻す
バケットリストが人生の「重み」を扱うのに対し、ウィッシュリストはもっと軽やかで、日々の活力を生み出すためのものです。現代社会で「やるべきこと(To-Do)」に追われ、自分の本当の欲求が分からなくなっている人に最適な処方箋です。
たとえ小さな願いであっても、それを言語化し、自分の意志で叶えていくプロセスは、自己肯定感を劇的に高めてくれます。
作成の要領:
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「100個」書き出す: 最初の20〜30個は誰でも思いつくものが出ますが、50個を超えたあたりから、あなたの本音(潜在意識)が顔を出します。
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カテゴリーに分けて考える: 「食」「旅」「美容」「学び」「人間関係」「住まい」など、10程度のジャンルを作ると筆が進みます。
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難易度を混ぜる: 「明日の朝、高いコーヒーを飲む」という数分で叶うものから、「3年後に起業する」という長期的なものまで、バランスよく配置します。
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定期的に更新する: ウィッシュリストは生き物です。興味がなくなったら消し、新しいワクワクが生まれたら即座に追加します。
3. ミッション・ステートメント:自分自身の憲法
特徴:人生の「北極星」を定める
バケットリストやウィッシュリストが「何をするか(Doing)」のリストであるのに対し、ミッション・ステートメントは「どうあるべきか(Being)」を定義する、いわば自分自身の憲法です。スティーブン・R・コヴィー博士の『7つの習慣』でも紹介された、最も深いレベルの自己対話です。
これがあることで、人生の大きな決断を迫られたときや、困難に直面したときに、迷わず自分の信じる道を選ぶことができるようになります。
作成の要領:
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「葬儀の弔辞」を想像する: 自分の葬儀で、家族や友人に「どんな人だった」と言われたいかを書き出します。それがあなたの理想の人物像です。
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役割ごとに考える: 「親として」「プロフェッショナルとして」「一人の人間として」といった複数の側面から、それぞれの理想を定義します。
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肯定文で、現在形で書く: 「私は、誠実さとユーモアを持って周囲を照らす存在である」というように、宣言の形でまとめます。
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毎日目にする: スマホの待ち受けや手帳の1ページ目に記し、一日の始まりに読み返して自分の「軸」を確認します。
4. コレド(信条):行動の判断基準を明確化
特徴:現場で機能する「即断即決」の武器
コレドは、ミッション・ステートメントをより具体的で、日々の行動に落とし込みやすくした「行動指針」です。リッツ・カールトンのような一流企業が導入していることで有名ですが、個人の人生においても非常に強力に機能します。
「迷ったときに、どちらの道に進むか」を瞬時に判断するための、自分なりのルール・ブックです。
作成の要領:
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過去の「成功体験」と「違和感」を振り返る: 自分が最高に輝いていたとき、どんな行動をとっていたか。逆に、後味が悪かったときはどんなルールを破っていたかを分析します。
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「短いフレーズ」に凝縮する: 「常に準備を怠らない」「迷ったら難しい方を選ぶ」「感謝は言葉にして伝える」など、反射的に思い出せる短い言葉にします。
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優先順位をつける: たとえば「スピード」と「丁寧さ」がぶつかったとき、自分はどちらを優先する人間なのかをあらかじめ決めておきます。
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実生活でテストする: 一週間、そのコレドを意識して過ごし、自分の心地よさや周囲の反応を見て、言葉を微調整していきます。
リストがあなたを自由にする
どれか一つからでも構いません。まずはノートを一冊用意し、一番上の行にあなたの「本音」を書き出すことから始めてみてください。(誰かに見せるものではないのです。)その最初の一行こそが、あなたが「自分自身の人生」を歩み始めた証となります。