防災時の非常袋や長期の旅行のために日用品をリストに基づいてあらかじめ用意されている方は多いと思います。しかしもしも自身が急病ですぐに入院となったときにリストを用意して備えている方はほとんどいないのではないでしょうか。
突然の入院が決まったとき、本人も家族も少なからず動揺するものです。しかし、そんな時こそ「何が必要で、何が不要か」を冷静に整理することが、予後の回復や入院生活の質(QOL)を大きく左右します。災害や旅行に比べると必要になる場面(入院)というのはたしかに少ないに違いありませんが、何事も備えあれば患いなしです。
また、普通の病院であれば入院に際して紙に印刷した必需品のリストを渡してくれるので、それに従うということで大きな問題はありません。しかし追加として持ってゆくと便利なものなどもあります。
今回は出産以外の一般的な入院を想定し、その選び方のコツなどを含めた「入院時の持ち物リスト」について紹介します。
入院生活は、非日常の空間での共同生活です。限られたスペースの中で、いかに「自宅に近い安心感」と「ストレスのない機能性」を両立させるか。そのためのポイントを4つのセクションで解説します。
第1章:必須書類・貴重品
入院手続きをスムーズに進め、トラブルを防ぐための最優先事項です。
1. 事務手続きの三種の神器
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診察券・健康保険証(またはマイナンバーカード)
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印鑑(認印)
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入院申込書・同意書などの書類一式
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ポイント: これらはひとつの「クリアファイル」にまとめておきましょう。病院では大量の書類(同意書、説明書、領収書)を渡されるため、ポケットが複数あるタイプが便利です。
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2. 医療安全を守る「お薬」情報
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現在服用中の薬(現物)とお薬手帳
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理由: 入院中に処方される薬との飲み合わせを確認するため、薬剤師によるチェックが必ず入ります。サプリメントや市販薬も隠さず持参・申告しましょう。
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3. 現金と貴重品の考え方
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必要最小限の現金(数千円〜1万円程度)
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選び方: テレビカードの購入や売店での支払いに備え、「千円札」と「小銭」を多めに用意してください。一万円札は院内で崩しにくい場合があります。
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貴金属は持参しない
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注意点: 指輪やネックレスは検査(MRIや手術)の際に外さなければならず、紛失のリスクが非常に高いです。結婚指輪も含め、あらかじめ自宅に置いておくのが賢明です。
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第2章:衣類・日用品
病院からあらかじめ連絡されることが多い項目ですが、選び方ひとつで快適さが変わります。
1. 衣類:キーワードは「前開き」と「温度調節」
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パジャマ(2〜3着)
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選び方: 診察や点滴があるため、「前開き」かつ袖口がゆったりしたものがベストです。最近は「CSセット(レンタル)」を導入している病院も多いので、洗濯の手間を省きたい場合は積極的に活用しましょう。
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下着(4〜5日分)
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選び方: 締め付けの少ない綿素材を。短期入院なら、100円ショップなどの使い捨て下着も帰りの荷物を減らす名案です。
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羽織りもの
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理由: 病室の空調は個人の好みで変えられません。季節の寒暖に応じてカーディガンやパーカーなど、片手で脱ぎ着できるものがあると重宝します。
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2. 履物:スリッパは不適格
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かかとのある靴
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理由: 病院内での転倒事故防止のため、現在多くの病院で「スリッパ・サンダル禁止」となっています。脱ぎ履きしやすく、底が滑りにくいリハビリシューズやスリッポンを選びましょう。
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3. 洗面・衛生用品
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洗面セット(歯ブラシ、シャンプー、石鹸)
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コップ(プラスチック製)
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選び方: 割れない素材であることはもちろん、取っ手付きのものだと寝たままでも持ちやすく安全です。
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箱ティッシュ・ウェットティッシュ
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活用法: 病院の備え付けはないことが多いです。除菌タイプのウェットティッシュは、食事前やベッド周りの清掃に役立ちます。
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第3章:QOL向上アイテム
「しおり」には載っていないけれど、経験者が口を揃えて「あってよかった」と言う小物があります。
1. ベッド周りの「基地化」グッズ
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S字フック & 小さなトートバッグ
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使い方: ベッドの柵にバッグを吊るし、スマホ、メガネ、リモコン、耳栓などを入れます。体が動かしづらい時期、手の届く範囲にすべてがある安心感は計り知れません。
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延長コード(2〜3m)
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理由: コンセントはたいていベッドの頭上にあり、スマホを操作しながら充電するには長さが足りません。
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2. 安眠とプライバシーの確保
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耳栓 & アイマスク
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理由: 大部屋では他人のいびきや、夜間の看護師さんの見回り(懐中電灯の光)が気になります。これがあるだけで睡眠の質が劇的に改善します。
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イヤホン(コードが長いもの)
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マナー: テレビ視聴や動画鑑賞には必須です。ワイヤレスの場合は充電切れに注意しましょう。
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第4章:3つの鉄則
ここで認識しておくべき「鉄則」をまとめます。
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持ち物への「記名」は必須 病院のしおりにある通り、紛失防止のため全ての持ち物に名前を書きましょう。ただし、下着などはタグの裏など、洗濯時に他人の目に触れても恥ずかしくない場所に書くのがコツです。
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「香りの配慮」を忘れない 柔軟剤やシャンプーの強い香りは、体調の悪い同室者にとっては苦痛(吐き気など)の原因になります。入院中は無香料か、微香性のものを選ぶのが大人のマナーです。
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「音」のコントロール スマホのアラームはバイブレーションにするか、スマートウォッチを活用しましょう。共同生活において「音」は最大のトラブルの火種です。
第5章:お見舞いに行く側の心得
もしあなたが「お見舞いに行く側」なら、相手の状況に合わせたチョイスが必要です。
1. 暇つぶしの定番と進化系
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本・雑誌: 重い本は避け、パラパラと眺められる雑誌や、短編エッセイが喜ばれます。
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パズル本(数独・クロスワード): ほどよく頭を使うため、時間の経過が早く感じられます。
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デジタルギフト: 相手がスマホ世代なら、Amazonギフトカードや動画配信サービスのプリペイドカードを贈り、「これで映画でも見てね」と伝えるのは非常に現代的でスマートな贈り物です。(病室で視聴のための電子機器を持ち込めるのか否かは事前に確認が必要です。)
2. 実用的な「ちょっといいもの」
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高級保湿ティッシュ: 自分では買わない「鼻セレブ」のような柔らかいティッシュは、意外なほど喜ばれます。
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蒸気の温熱アイマスク: 入院中の眼精疲労とリラックスに最適です。
3. お見舞いのタブー
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生花・鉢植え: 最近は感染症対策で生花持ち込み禁止の病院が激増しています。また、鉢植えは「根付く(寝付く)」として縁起が悪いため厳禁です。
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食事制限の無視: 勝手な飲食物の差し入れは、治療を妨げる恐れがあります。必ず事前に「食べていいものがあるか」を確認しましょう。
終わりに
入院準備で最も大切なのは、「荷物を増やしすぎないこと」です。病院は生活の場所ではなく、あくまで治療の場所。物理的な荷物を最小限に抑え、その分、心に余裕を持って療養に専念できる環境を整えましょう。
もし迷うものがあれば、「後で家族に持ってきてもらう」というスタンスで十分です。