これから一人暮らしや新婚生活といった新生活をはじめるにあたって、新たに揃えるべき日用品のひとつとして家庭用の『救急箱』を考えておられる方も多いことでしょう。
ここではひとつの参考としてわたくしのまとめを紹介させていただきたいと思いますので、よろしければお付き合いください。
ただ、前置きとして関連法規の存在についてひとつ触れておきます。
あなたがドラッグストアの店頭やインターネットの通販サイトで「救急セット」を物色してみて、ちょっと不足に感じることは無いでしょうか? それは救急セットに入っている内容物がバンソーコーやホウタイ、ハサミといった「衛生用品」ばかりで、肝心な頭痛薬や軟膏、胃腸薬といった「医薬品」がまったく無いという点です。
これは以下の(平成9年の厚生省の通知「組合せ医薬品等の取扱について」からの抜粋)とおり、我が国では医薬品を組み合わせて販売することを過去からずっと薬機法上で認めていないという背景があるためです。
「医薬品等が、その用途、用法、用量について慎重かつ適切な判断を要することを考慮して個別に承認等を行っており、これらの販売においても特段の理由により認められる場合を除いては、一般には組合せの形態にして販売することは認められないとして取扱ってきたものである。」
2004年7月から一部の「医薬品」が「医薬部外品」の区分になったことでコンビニエンスストアでも整腸薬などが入手できるようになりましたが、未だまだ政府規制は一般消費者の利便を十分には配慮していないような印象を受けます。
なお、さすがに江戸時代から続いている「富山の薬売り」の販売形態は例外的に認められています。使った分の点検が面倒でなければ、「富山の薬売り」方式の会社にお願いするというのも、救急箱の調達に関する有力な選択肢になるでしょう。
それでは順不同で家庭用救急箱で揃えるべき品物について列挙してゆきます。
【容器】 救急「箱」として市販されているものが手軽です。不要となったお菓子の大きめの缶などで間に合わせることもできますが、外見からして救急箱であることが明確に分かるようにしておいた方が良いでしょう。
小物が多く入るので仕切りがあること、片手が負傷した際でも容易に開けられるような形であること、衛生用品と医薬品などが十分に入る大きさであることがその目的に照らして必要条件になります。
また、置き場所は家のなかで比較的取り出し易い場所にしましょう。足や腰を痛めたときに、椅子に登って棚の上にある箱を取るのことになるのはちょっと苦しいでしょう。そしてなるべく冷暗な場所で保管した方が、内容物の劣化を少しでも緩和できるので望ましいです。
【衛生用品】 他のインターネットのサイトや書籍でも色々列挙されていて、わたくしも参考にしましたが、個々人で必要性を判断して、順次買い揃えてゆけば良いと思います。
- バンソーコー
- 体温計
- 包帯
- 三角巾
- ガーゼ
- サージカルテープ
- 綿棒
- ハサミ
- とげ抜き
- 爪切り
- 耳かき
- ピンセット
- 止血帯
- 氷のう
- マスク
- 眼帯
- ポイズンリムーバー
【医薬品】 医薬品は衛生用品以上にどの商品を選んで収納するかの判断が個々人で分かれてしまいます。普段から選んでいる頭痛薬があればそれを買うとしても、あまり便秘になったことのない人はどのメーカーのどの便秘薬を選ぶべきか、そもそも備えておく必要があるかは救急箱の容量や個々人の判断になってしまいますのでご理解ください。
- 総合感冒薬(カゼ薬)
- 解熱鎮痛剤(頭痛薬など)
- 総合胃腸薬(胃薬など)
- 整腸剤(下痢止めなど)
- 口腔咽喉薬(ノドの痛みに)
- アレルギー錠(花粉症やジンマシンに)
- 咳止め
- 外傷薬(火傷やキズ用の軟膏など)
- 消毒薬
- かゆみ止め(虫刺され軟膏など)
- 湿布
- トローチ
【その他】
- メモと筆記用具
- 応急処置の手引書
- 裁縫セット(小さいもの)
【救急箱の外に】
- マスク 毎日のように使うのであれば箱の外にも。
- うがい薬 これは救急箱でなく洗面所に置きたい。
- 目薬 これも毎日のように使うのであれば箱の外に。
- 氷枕 普段から冷蔵庫にいれて緊急時に備えるべき。
買い揃えた後は定期に医薬品の有効期限を点検して、超過間近になっていれば躊躇なく買い替えましょう。衛生用品でもバンソーコーなどは劣化しますし、電子式体温計であれば電池切れも心配です。
年に一度、例えば毎年9月1日の防災の日にこうした棚卸しをするなどと日にちを決めておくことをお勧めします。
今回は家庭用の一般的な救急箱について触れましたが、防災避難袋の中や職場の机の中などに小さな救急箱を用意しておくことも大切ですので、別の機会にご紹介させていただきたいと思います。
また、職場では労働安全衛生規則と事務所衛生基準規則によって救急用具を設置することが求められており、こちらはある程度内容物(労働安全衛生規則 第634条)が指示されていますので、組織として急病人や負傷者への対応手順も含めた事前準備が必要となっています。
それにしてもFirst Aid Kitという語でインターネットの画像検索をしてみると、海外ではかなり充実した「救急箱」が市販されていることが分かりますので羨ましい限りです。 前置きで挙げた規制は、何か不祥事があったら政府や医薬関係者が責任を追求されるのを過剰に恐れているのではないかと思いますが、困ったものです。