アメリカのプロ・スポーツチ―ムの名付け方に感心

 アメリカのプロ・スポーツ・チ―ム、具体的には野球(MLB)とアメフト(NFL)、バスケットボール(NBA)、アイスホッケー(NHL)のチーム名を眺めていると、同都市(フランチャイズ)内でオーナーは異なっているはずが何かしらの同じ意図を以ってそれぞれの名前がつけられていることが分かります。こうした名付けがなされる背景には、郷土愛かファンへのマーケティング、名前を決定することへ強くこだわる文化などがあるに違いありません。以下に目についた実例を挙げてゆきますので、どうぞご確認ください。

 

 シカゴは株式などの商品取引で有名であり、そのためかNFLはベアーズ(商品取引用語で下降基調ないし弱気)でNBAはブルズ(同じく上昇基調ないし強気)という対比で名付けられた形になっています。また、MLBはカブス(子熊)となっているのも、NFLとのつながりを連想させます。

 

 デトロイトではMLBはタイガース(虎)でNFLはライオンズ(獅子)と、猛獣の中からしばしば対比される2種を並べたような形になっています。

 同種の動物から選んだように見える事例として他には、アトランタをフランチャイズとするNFLチームはファルコンズ(隼)で、NBAチームはホークス(鷹)と共に鳥類から近類で名付けられています。ボルティモアでもNFLはレイブンズ(烏)でMLBはオリオールズ(ムクドリモドキ)と、こちらも鳥類から2種類が選ばれています。

 

 そもそもアメリカのプロ・スポーツチ―ム全体で見ても鳥類に由来するチーム名は相対的に多く見られるため、何か心理的ないし文化的に好まれる傾向がありそうです。そういえば日本のプロ野球12球団の中でも3チーム(スワローズ・ホークス・イーグルス)は鳥類から名付けられています。

 なお、鳥類以外の区分としては猛獣や人(出身・職業など)、自然、地場産業を由来としていることが多いように感じます。そうした区分でも同じフランチャイズ都市で同じ意図を感じさせる事例を探してみましょう。

 

 マイアミではNFLがドルフィンズ(イルカ)でMLBはマーリンズ(マカジキ)と、大型の海洋生物から選ばれています。アメリカ国内でも南国リゾートの印象を強い都市であるためか、それから連想されるモチーフに決めたものと想像されます。

 

 ヒューストンはNASA(アメリカ航空宇宙局)の宇宙センターがあることで有名で、かつ地場産業にもなっているのではないでしょうか。NBAはロケッツで、MLBはアストロズ(宇宙飛行士)と名付けられています。

 また首都であるワシントンを拠点都市としているチームとしては、MLBのナショナルズ(国民)とプロホッケーNHLのキャピタルズ(首都)があります。このあたりはもう少しひねった名前の方が良さそうな気がしませんか?

 

 ニューヨークに拠点を置くプロ・スポーツ・チ―ムが多いのですが、その中で意図を強く感じさせるものとしては、NBAのニックス(オランダ系の意)、MLBのヤンキース(アメリカ東北部)とメッツ(都会)と住民の出身に由来するチーム名が見られます。

 

 以上の例示は2023年7月現在のアメリカのプロ・スポーツチ―ムの現状から挙げたものです。アメリカのプロ・スポーツチ―ムは日本より数が多い上に頻繁にフランチャイズ都市を引っ越したり、チーム名を変えたりするため、近い将来に変わりうることもご了承願います。

 現在、ロサンジェルスに拠点を置くNBAのレイカーズ(湖)は、1947年に湖の多い土地で知られるミネソタ州で設立された当初のチーム名を1960年にロサンジェルスに移転した後も引き続き使っているチームです。したがってロサンジェルスの自然や歴史や関連人物とは何の関係も無いのが現状になっています。しかしそれを承知で名乗っているのですから、これはこれで伝統を大切にしているということで意義を知り、誇りにしているということになるのでしょう。

 

 それにしても日本のプロ・スポーツチ―ムの名付け方は、チームイメージの主張だけに終始していて、上記で列挙したような地元の共感などなどまで深慮遠謀したものにはなっていないように感じられます。日本において、本当にスポーツを高い水準の文化に昇華させるには、チーム名ひとつから細かく考えておく必要があると考えます。