グチや不平不満を「公憤」にするためにまずはメモ

 呑み屋で自分の会社組織の悪口をぶちまけるという姿は、おそらくここ30年くらいで随分減ったのではないかと思います。そもそも限定的な仲間と飲む機会が減ったことや、話題として暗澹とした気分になるのが浸透してきたために避けられるようになったと考えられます。「アルコール・ハラスメント」として、勤務時間後の会に強制参加させることも、個人の体質を考慮せずにアルコール飲料を飲ませることは、いまや悪質な因習であるという認識がだいぶ一般に広まったようです。

 

 ここで個人的に振り返りたいのは、呑み屋での「悪口」が実際のところそれなりに妥当な指摘であって、中長期的には対応して解決しなければならない課題であったことが散見されたということです。それがその場限りの話題、あるいは「酒の肴」で終わってしまうことが多いということが残念に思われてなりません。

 また、思いつきや個別の経験などの断片的な話が多く、それがゆえに「こぼればなし」に類するもので終わってしまいがちですが、本当は検証してみれば、別の場所でも存在するような普遍的な問題点や焦点である可能性を感じたこともありました。

 そして仮にあるとき、会社側から課題の指摘や挙げるようにと要請されたときがあっても(これは好機のはずですが)、理路整然と列挙することはもちろん、呑み会のときの表現力も熱意もなく、ほとんど返答できないという人がほとんどでした。

 

 ここで、気付いた不合理や問題点、あるいは美点についてはまずはメモして書き溜めておくことを推奨したいと思います。メモしておけば、その後ときおり見直しては考えを整理し、問題点を網羅的に分析することができます。単なる感情的な思いつきのグチや不平不満でなく、客観的な分析や指摘であれば前進のための大きな助言になるのですから、そのために呑み会のメモは重要な一次情報になるといえます。

 個人的な経験ですが、ある管理職の方は、「ちょっとトイレに失礼します。」といって呑み会で離席するとトイレで気になった話題についてメモをしていて、私も一時期は真似ていたことがあります。(最近は本当に飲み会が減ったので、この対応もとることも無くなりました。)管理職としては、組織運営の問題点が挙げられたら、呑み会の場であってもメモしておくのがやはり職務ということになります。

 

 そういえば「上司は思いつきでものを言う」(橋本治 2004年)という本がベストセラーになったことがありました。同じように「部下」も思いつきでものを言うので、呑み会の発言であっても意図を無駄にせず背後にある大きな課題を明確にしておくべきと心得たいものです。

 

 それにしても、会社組織を超えた政治社会の事件に触れたとき、その都度「感じる」ことはありますが、どうもすぐに忘れてしまいがちになっていませんか?

 その問題の所在や重要度を抽象的に考えたり、解決策の提言を探したりすることを通じてとったメモがあれば忘れずに見直したいものです。また、不見識な発言や行動のあった議員の名前も、次の選挙まではメモしておきたいですね。なにせ我々は重要なことでも忘れたり、理解が曖昧になっていたりすることが多いのです。